飲・食

食事の留意する点 ①

食事は楽しく調和の心で摂る

食事のときは、心和やかに楽しく食べると、消化器が活発に働き栄養素の処理が円滑に行われて、ホメオスタシスの機能がフルに発揮されます。快の感情は自律神経とホルモンのバランスを調え、胃腸をはじめ臓器全体の機能が高まります。唾液、胃液、腸液、膵液、胆汁など、消化に関与する体液が充分に分泌され、その質も良くなります。その結果、消化、吸収の消化活動がスムーズに進み、栄養素を効率よく利用することができます。
食物の栄養素が効率よく利用されると、良質な血液が造られ、良質な細胞の形成につながります。
怒り、不安、落ち込みなどネガティブ意識のときは、消化能力が低下しています。イライラや不安感を持ちながら食事を摂ると、消化器の負担が大きく、老廃物が蓄積しやすく、病気にかかりやすくなり、老化が早く進みます。さらに顔色や人相まで悪くなります。
不調和な心で食事を摂ると消化が悪いだけではなく、血液の質が悪くなり、細胞の質にまで影響が及びます。さらに体内では、栄養素が酸化されやすくなり、老廃物やAGEs(最終糖化産物・老化の元凶)が増加します。その結果、老化や体全体の障害の原因になります。

疲労時は食事を摂らない

疲労しているときは、消化器の機能が低下するため食欲は減退します。頭の欲求ではなく、体内からの本当の食欲がわいてきたときに食べるのがもっとも消化・吸収の効率が良くなります。また体内の受け入れ態勢ができているときが、最もおいしく食べることができます。

疲労時に食事を摂ると、疲労物質の処理と細胞の修復が円滑に進まず、疲労回復が遅くなり、その状態が長く続くと病的状態になります。
疲労物質が体内に蓄積している時は、これを分解・排泄しなければなりません。そのためには消化器、運動器などは一時休止状態にして、排泄機能を最大限に高めることが必要です。
疲労時に食事を摂ると、疲労物質の処理と消化活動のどちらも不完全になります。

就寝前の食事は避ける

胃内に食物が少しでも残っている状態で寝ると、胃から脳へ信号が送られ続けて熟睡が妨げられ質のよい睡眠がとれません。その上、眠ると消化器は休止状態に入り機能が低下します。就寝前に食事を摂る習慣を続けると、消化器、肝臓、循環器などが機能低下し、病気と老化を促進する原因になります。さらに知的機能が低下し、学習能力、体力、身体能力、技術力が低下するため、全ての作業効率がダウンします。
就寝前2~4時間は食事を摂らないようにします。胃内の消化時間は、穀菜食なら2時間、油やタンパク質が多く入れば4時間かかります。その間は、眠らないようにしなければなりません。

食事中の頭脳活動は消化不良の因

脳がフル活動しているときは、血液が脳に集中します。そのため消化器に循環する血液が不足して、消化機能が低下します。また脳から自律神経を通じて、消化器の活動を休止させるシグナルが送られます。したがって、こういう時は本来の食欲がわかないものです。それを時が来たからと機械的に食べると、脳も身体も双方の機能が低下します。そのため消化不良を起こし、学習・運動・仕事の効率が悪くなります。頭を休めてリラックスできない時は、食事を摂らないことが賢明です。
脳を使いながら食事を摂ることが習慣になっていると、栄養素が十分に活用できないだけではなく、疲労が蓄積し、内臓全体が低下して心身ともに衰えてきます。

食後の入浴・運動は避ける

入浴や運動をすると、血液は筋肉内に多量に流れて消化器に流れる血液が不足し、消化機能が低下します。食事直後の1時間は、入浴・運動を避けることが賢明です。
また入浴後は、30分~1時間くらい間をおいてから食事を摂る方が、消化の効率が良くなります。食事の時は、消化器にエネルギーと意識が集中するようにします。

食前・食後に、水分を多量に摂らない

食事とともに水分が多量に胃内に入ると、消化液が薄められて消化の効率が悪くなります。食事時にお茶や水を多く摂り過ぎないように、注意が必要です。
みそ汁、スープ、お茶、水と、気づかないうちに水分全体が多くなることがあります。特に塩分、油、タンパク質が多い食事や、過食の時にはやたらと水が欲しくなります。こういう時こそ要注意です。
食事と一緒に水分が必要な人は、唾液の分泌量が少ないので、唾液腺の機能を上げることが必要です。

食前・食後に冷たいものを摂らない

冷たいものが胃内に多量に入って胃の温度が下がると、消化能力が低下します。特に消化しにくい油・タンパクなどを多く食べたところに冷たい物が多量に入ると、消化不良を起こします。
胃の温度が下がると、胃のすぐそばに位置し密着している膵臓、肝臓、腎臓が冷やされて、機能が低下します。膵臓、肝臓、腎臓は、血液循環が良いほど機能が上がります。冷やされて血行が落ちると、機能が大きく下がります。そうなると消化不良だけではなく、重要器官に大きなダメージを与えます。逆に熱い物ばかり食べている人は、歯と歯茎が弱くなります。
食物は、体温に近い35~45℃の温度で身体に入ると、消化・吸収が最も良くなります。

陰陽のバランス

陰陽が偏った食事を摂り続けると、体調が崩れやすくなります。人体は陰陽のバランスが調っていることで正常に機能することができます。陰陽バランスが損なわれると、体全体の機能が低下します。
食材全体の陰陽バランス、調理時の陰陽バランスをとることが重要です。陰陽バランスが偏っていると、味がおいしくなく、身体のバランスも崩します。

塩分摂取量

塩は本来、総合ミネラルの補給物質です。体内のミネラルバランスがくずれると、体中が不調になります。大きく崩れると、病的状態になります。
夏に多くなる陰性食物には、塩分を加えて摂らなければ身体バランスを崩します。また気温が高い日は、汗が出ることが多くなります。汗とともに排出された塩分を補わなければナトリウム不足になり、熱中症をはじめ様々な障害を起こしやすくなります。したがって夏季には、塩分が多く必要です。

難消化食物と強陰性食物を同時に摂らない

消化しにくいものと、強陰性のものを同時に多く摂ると、消化不良を起こすことがあります。強陰性食物を多く摂ると、胃の細胞が緩んでぜん動が低下し、消化液の分泌が減り、消化機能が低下します。そこへタンパク質、脂質が多く含まれる食品を摂ると、病原体の菌やウイルスが繁殖し、食中毒を起こすことがあります。
例えば、バナナ、マンゴ、パイナップル、アボカド、ブドウなどを多量に食べ、同時に天ぷら、肉、魚などを多量に食べると、障害を起こすことがあります。

夏季は食欲が落ちる

夏季は冬季より必要カロリーが少なくなります。寒い時には保温のため多くのカロリーを消費します。夏は保温する必要がないため、必要カロリーが少なくなります。そのため秋冬に比べて夏は食欲が落ちるのが当然の生理です。
「夏は食欲がない、玄米が重い」という方がいます。その時は、麺など軽い食事にすることが多くなります。特に昼食は麺にすることが多くなります。
食欲がない時は食事を摂るべきではないのに頭の欲求だけで食事を摂ると、栄養にならず老廃物になります。そういう状態で麺など粉食を摂ると、体内処理が円滑に進まず、さらに多くの老廃物を生みだします。それが続くと、病的状態になります。

姿勢

食事を摂る姿勢が悪いと自律神経のバランスが乱れて、消化器の働きが悪くなります。背筋を伸ばし、自然な楽な姿勢で食事を摂ることが、消化器をはじめ臓器全体の機能を良くします。
高齢者の場合は、食事時の姿勢が悪いと誤嚥(飲込みのトラブル)を起こしやすく、消化不良になりやすく、脳の循環が悪くなり認知症にかかりやすくなります。