脳と心に影響をおよぼす様々な要因

人の心と脳は、密接な関連があります。体の器官・臓器や活動は、すべて脳によってコントロールされています。体の末端の毛細血管の一本一本から、皮膚の細胞のすべてに至るまで、脳が司り統制しています。脳と心とすべての細胞とは、密接なつながりがあります。

呼吸、姿勢、視線は、心のあり方に大きく影響を与えます。歯、手、耳、皮膚なども、脳につながる神経系を通じて、心に影響を与えます。さらに視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの知覚神経(五感)を通じて、脳から心に作用します。

心を健全に保つためには、日常の生命活動を健全に保つことも大切な生活要素です。心身が健全であれば結果として活動状況が整ってきますが、真に健全ではない現代人は、外的・物理的にも整える心がけが必要です。

呼吸

呼吸は無意識に行われているため普段呼吸を意識することはありませんが、健康な体でなければ不自然な呼吸になりがちです。不自然な呼吸は、心身の健康を損なうことになり悪循環に陥ります。

健康的な呼吸は、赤ちゃんの呼吸です。赤ちゃんの呼吸は、胸郭(肋骨)を広げ、横隔膜を上下に動かす『腹胸式呼吸』です。腹胸式呼吸は、酸素と二酸化炭素の交換の効率が良く、血液循環、リンパ循環が促進され、自律神経系・内分泌系が安定し、精神が安定し、脳の機能が高まり、全身的に機能が上がります。

呼吸は習慣ですから、意識的に呼吸を整えるよう心がけていることによって、自然に習慣化してきます。はじめは腹式呼吸から、だんだんと腹胸式呼吸を習慣化するようにするといいでしょう。

姿勢

日常の動きや姿勢は、脊柱を中心に健全な形を保つと、ムダな動きがなく疲れず、身体機能が高まり、精神の安定が保たれます。

心身が健康であれば、自然に整った姿勢になるものですが、現代人は健全な姿勢の人は少ないのが現状です。姿勢を意識的に整えるようにして、それを習慣化することが心身の健康にとって重要です。特に首の状態は、脳と心に大きく影響します。

就寝中の姿勢が最も重要ですが、立つ、座る、歩く時の姿勢も身体の健康と心の安定に深く関わってきます。

視線角度

視線が水平よりやや上向きになると、心が明るくなります。反対に、視線が少しでも下向きになると、数分でネガティブな意識になりがちで、心が明るく前向きになると、自然に視線は上向きになりやすくなります。うつ状態になると、視線が下向きになります。

意図的に、視線を水平か少し上向き加減になるよう習慣化すると、ポジティブな意識になります。

また視力の低下にもつながります。

手指

手指の先端には多数の神経が集中しており、その神経は脳につながり強い相関関係にあります。

さらに手指の爪の付け根の両端には経穴(鍼灸のツボ・10か所)があり、各臓器と自律神経につながっています。このツボに適度な刺激を加えると、関連器官の機能が上がり、自律神経が安定します。その結果、精神安定につながります。

歯は、すべて神経を通して脳につながっています。またあごの動きにも、脳が連動し臓器・器官に影響を与えます。

したがって食物をよくかむと脳にシグナルが送られ、精神の安定にもつながります。歯が失われて咀嚼が不十分になると、脳の血液循環が滞り認知症の誘因にもなります。

皮膚 

皮膚に手や肌が触れると、脳に強いシグナルが送られます。脳からは、自律神経・内分泌系(ホルモン分泌器官)にシグナルが送られ、器官や精神の安定が得られます。

皮膚をマッサージする場合と、軽く触れてさする場合と比較すると、軽く触れる方が心身に与える影響が大きいことが解明されました。近年の研究報告によると、認知症患者に軽いタッチを施すことにより、症状が回復することが明らかになりました。

以上のように、皮膚が感じる触覚は、心身に大きな影響を与えます。

五感(知覚神経)

視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感は、脳につながり、心に影響を与えます。

基本的には、知覚神経を通して快感を感じる時は心を穏やかにしポジティブな思いになりやすく、不快感はネガティブな思想につながります。特に嗅覚と聴覚は、脳に直結し心に大きな影響を与えます。

香りは、生活とともに常に存在しています。嗅覚は動物にとって、生命を守るために重要なセンサーです。野生生活を送る動物は、身を守るために人の数千倍の嗅覚をもっています。そのため嗅覚は、脳と直結しています。香りは、心に大きく影響します。心地よい香りは心を癒し、不快な香りはストレスになります。

様々なハーブの香りを使う『アロマテラピー』、複数の草根木皮をブレンドして粉末にした『塗香』、草根木皮を練って固めたものを加熱して香りを出す『お香』、花や植物の香り成分を抽出してアルコールに溶かした香水、化学合成した香料など香りを活用するものなど多くの物があります。いずれも香りを活用して心身に良い影響を与える目的です。

香りは、自身の好みに合うものが良い場合が多いのですが、嗅覚が不健全であったり、脳の嗅覚を司る部分に障害がある場合は、好みだけに合わせることができないこともあります。認知症の初期には、嗅覚異常が現れることが多くあります。

聴覚は、心に大きな影響を与えます。快感を伴う音楽は心をリラックスさせ、自律神経系・内分泌系を安定させ、全身に良い影響を与え、不快感を感じる音や音楽は心身を不調に導きます。

嗅覚、触覚、味覚、視覚などの感覚も、同様に心身に作用します。

聴覚

聴覚で感じた音は、電気信号に変換されて脳に送られます。脳で快感を感じると、臓器・器官の機能が上がり、精神が安定します。

好きな音楽を聴くと、陶酔感にひたることもあります。太鼓や木板、鈴(りん)などをリズミカルに叩く音を聞いていると、トランス状態(意識統一状態)に入り、精神が安定し、意欲が増したり、身体的苦痛が軽減したりすることもあります。

就寝時に、心地よい音や音楽を聴いていると、入眠がスムーズになります。

スポーツのゲームの際に、軽快で力強い音楽や、太鼓の音などを聞くと、意欲が鼓舞されます。

音は日常の生活環境の様々な所に存在して、人の心身に大きな影響を与えています。

嗅覚

現代の生活環境には、不快な臭いがあふれています。現代人の長年の不自然な生活が嗅覚を鈍麻させ、香りをあまり感じなくなっている人が増えています。健康になれば、嗅覚は再び戻ります。

香りを出すものは、お香、精油(アロマエッセンス)、塗香などがあります。果物の皮、ハーブ、野菜、観葉植物なども効果的です。原則は、自分が心地よいと感じるものが良いものです。

アロマエッセンスは、100%純粋なものでなければ逆効果になることがあります。また鮮度が大事ですので、製造が新しいものを選びましょう。消費期限は、3~6ヶ月です。塗香は、天然の草木を原料に粉末化したもです。密閉保存をすれば、数年間は香りが持続します。塗香は、僧侶や宮司が瞑想の時に使うものです