老化

老化防止

老化とは

人の人生における煩悩は、生老病死に象徴されています。このうち老いる苦しみは、加齢とともに誰もが実感するものです。長く生きていくほどに、すべての機能が衰えてやがてこの世から寂しく去っていく。当たり前のように、受け入れられています。古今東西、数え切れないほどの人々が不老長寿の法を必死に探し求めてきましたが、達成できた人はいません。現在でも、多くの人が、老化のメカニズムを研究しています。しかし、人を細分化して部分的にメカニズムを捕らえようとする科学者も、直感と経験則によって答えを得ようとした過去の人々も、人の真の姿を解明することは困難でしょう。人というものの全体像を内外から認識することから、生老病死解決の糸口が見えてきます。これからも人類の永遠のテーマとして、探求が続けられていくでしょう。

人がこの世に生まれてから20~25年を経て成長を終えると、そこからは老化の一途をたどっていくことになります。脳をはじめ、神経細胞、皮膚、歯、目、耳、骨、血管など、身体を構成するすべての器官の機能が衰えてきます。衰えは、はっきりとした自覚を伴って現れます。

人体は、37兆個の細胞と30~40兆個の血液細胞で構成され、互いが絶妙な連携のもとで機能しています。老化現象は、細胞レベル・分子レベルで、機能低下が起こってくる現象です。細胞の機能が低下するのは、細胞の代謝が円滑に行われないためです。細胞の代謝が円滑に行われるための最大の条件は、細胞の環境です。細胞の環境とは、細胞の周囲を常に循環している体液です。体液の質と循環が常に完璧であれば、細胞は完全に機能することができます。体液は、血液とイコールといってもよいものです。体内の液体成分は、血液、リンパ液、細胞外液、細胞内液、涙液、唾液、胃液、腸液等々、様々に形と質を変えて体中をめぐっています。その元になっているものは、すべて血液です。つまり、体液を良質にするには、血液の質を高めておくことが必要です。血液の質は、食物の質とイコールです。したがって、食生活を整えて最良の血液を造ることが、老化防止の重要な条件になります。

 

老化防止の身体機能

たんぱく質の生成、細胞の新生、細胞の傷の修復、免疫力の保持等々、老化を防ぐために必要な機能をコントロールするホルモンは、加齢とともに減少していきます。成長ホルモン(ソマトトロピン:STH)、ホルモンの素材となるデヒドロ・エピ・アンドロ・ステロン・サルフェイト(DHEAS)等、多くのホルモンが関与しています。ホルモンのバランスを安定させるには、内分泌器官の機能を高めます。視床下部、脳下垂体、甲状腺、唾液腺、副腎、生殖腺等内分泌器官の機能を高めることが、ホルモン分泌を旺盛にし、バランスを整えることになります。

 

老化防止の食事

老化防止のための食事は、食養の基本を調えた上で、血液循環、ホルモンバランス、腸、肝臓、腎臓、副腎等の機能を高める食物を主にします。

全身の細胞を充分活動させるため、栄養素と酸素を滞りなく運び続けるには、血液が常にスムーズに循環していなければなりません。そのためには血液の質を高く保ち、循環を円滑にすることが重要です。

良質な血液を造るためには、小腸、肝臓、腎臓の機能が重要です。食物は、消化器で処理されて小腸から吸収されるときに、血液細胞の初期段階の質が決定づけられます。肝臓では、血液成分の調整をして常に一定の状態を保っています。血液中の余計な老廃物は、腎臓から排出され血液のきれいな状態を保っています。

 

老化防止の食事

次に重要な条件は、主食の質です。主食として食べる食物は、人体に必要な成分の大部分を、バランスよく活性が高い状態で含んでいるものです。最もバランスの良いものは、米です。米に含まれている栄養素を高い活性で食べるには、玄米をわずかに発芽させたものがベストです。これを、セラミック鍋か圧力鍋とセラミック内鍋との組み合わせで炊くことで、栄養素が最も効率よく摂取できます。炊いた玄米飯は、時間がたつと栄養素が分解していくので、炊きたてを食べるのがベストです。生の発芽玄米・大さじ1~2杯を常に食べていると、ホルモン分泌が増加し、脳の血流が盛んになります。

きび、あわ、ひえ、ライ麦、燕麦、とうもろこし等雑穀は、栄養価は高いが米にはかないません。栄養バランス、陰陽バランス、味、いずれも穀類中、米が最高レベルです。その米を、粒のまま加熱して食べるのがベストです。米を粉末にして加工すると、酸化・変性を起こし栄養価が下がります。そのため、せんべい、だんご等、粉末加工したものの多食は、老化を早めることにつながります。小麦を粉末加工した、パン、麺、菓子等も同様です。できるだけ、控えめにしたほうが無難です。食品は、一般的に加工度が少ないほど栄養成分の変性が少なく、体内での利用率が高く、老廃物の発生も少なくなります。ゴマなどの種子類についても、同様のことがいえます。ゴマを炒ってすりつぶす過程で、加熱と摩擦と酸素によって、酸化・変性が起こります。これをゴマ塩にして毎日食べ続けると、体内で活性酸素が増加して老化が進んでいきます。ゴマは、生のまま玄米と一緒に炊きこむことで成分の破壊はなく、栄養素と有効成分は100%利用できます。

玄米には、必ず塩(約0.5%/ 1合)を加えて炊きます。これによって、玄米のミネラルバランスが調って、良質な赤血球を造ることができます。炊き上がった玄米に塩をかけても、玄米の栄養素と塩のミネラルが結合できないので、良質赤血球を造ることができません。玄米には、ゴマ、カボチャの種、松の実、ヒマワリの種、蓮の実、ギンナン等を適宜少量ずつ生のまま入れて炊くと、さらに老化防止に効果的です。

三大調味料の塩、味噌、醤油は、ミネラルの宝庫です。味噌、醤油に含まれる有効成分は、ビタミン、アミノ酸、酵素、核酸、有機酸等、多種多量です。味噌、醤油は、血行促進、免疫強化、胃、腸、肝臓、腎臓、心臓等の機能向上に効果があります。このように優れた三大調味料は、毎日使うことで老化防止につながります。

副食は、野菜、海藻を主にして、豆類、野草を少量加えます。野菜は、身土不二、一物全体、陰陽調和、鮮度、農法等を考慮にいれて選びます。

飲み物は、三年番茶、タンポポ茶、ハトムギ茶、ヨモギ茶等を水出しして適量飲むのが良いでしょう。緑茶やハーブティー、生水も、控えめに摂ると良いでしょう。

調理法は、『蒸、煮、炊、焼、漬』を、主にします。特に、漬物は、大変合理的な調理法です。野菜は、塩分を浸透させることによって、ミネラルバランスが調います。その結果、おいしくなり、良質血液を造る条件が向上します。発酵漬物にすると、さらに有効成分が増えます。

 

避ける食物

動物性食品は、老化の大きな原因になります。動物食品に共通するのは、体内に多量の老廃物を発生させ蓄積させることです。老廃物は、老化の最大因です。精製糖、精製塩、一般加工品等は、極力避けます。

油脂類は、冷圧法で絞ったものをごく少量の使用にとどめます。酸化した油脂、ラード,ヘット、バター、マーガリン等は、極力避けます。これらの油脂は、高齢になるほど処理ができにくくなります。体内で、不完全処理の状態で残った脂質は、血管壁や細胞膜を強力に老化させていきます。体内で必要とする脂質は、良質炭水化物を素材にして自らの体内で造ったものが最良です。

 

咀嚼の大切さ

食事は、よくかんで食べます。かむことで、消化が良くなるとともに、唾液腺や脳からホルモンが分泌されて代謝が活発になり、若返り効果があります。また、顎からの刺激は脳に伝わり、脳から全身組織に指令が送られて、臓器・器官全体の機能が上がります。

過食・飽食の習慣は、老廃物や疲労物質を蓄積させて、急速な老化につながります。少食の習慣は、老化を遅くします。特に午前中は、ごく少食にするか、何も食べずにいるのがベストです。午前中、消化器に負荷をかけないと、体内に蓄積している老廃物の処理が集中して行われます。また、低下した器官が一気に回復します。さらに、代謝促進・老化防止に働くホルモンが、多量に分泌されてきます。これらのホルモンは、食事を摂った途端に分泌がストップします。現代人は、身体の要求に関係なく、頭の要求と時間によって食事を摂っているので、空腹の時があまりありません。のべつ幕なしに食べている人は、加齢とともにホルモン分泌が急速に減少してきます。

 

老化防止に有効な食物

次の食物は、老化を防ぐ効果のあるものです。積極的に摂ると、良いでしょう。

【老化防止食】
 葛、ゴマ、発芽玄米、海藻、ヤマイモ(自然薯、イチョウイモ、ヤマトイモ、ツクネイモ)、カボチャ種、ヒマワリ種、松の実、蓮の実、ギンナン、クルミ、発酵食品

【血行促進】
葛、タンポポ根、味噌(赤)、醤油、ニラ、タマネギ、ワケギ、ラッキョウ、ニンニク、松の実、ヒマワリ種、ギンナン、クルミ、黒ゴマ、梅醤タンポポ茶、梅醤番茶

【ホルモン分泌促進】
葛、タンポポ、ヨモギ、発芽玄米、カボチャ種、ギンナン、松の実、蓮の実

【腸機能向上】
葛、発芽玄米、フノリ、ニラ、キクラゲ、ゴボウ、ゴマ、納豆、たくあん、梅干、浜納豆、味噌、醤油、たまり、ブラウンマッシュルーム、ヒジキ、レンコン、ゴボウ、モズク、アラメ、コンブ

 

老化防止の健康法

【腹式深呼吸】

下腹を大きく動かしながらゆっくり呼吸をすることによって、肺は、全体が大きく膨らみます。こうして肺の内部の圧力が上がり、酸素の取入れが効率よくなって、血液中の酸素の量が増えます。酸素量が増加すると、代謝が上がり細胞の基本機能が高まります。脳にも酸素の供給が増加して、脳細胞の機能が高まります。脳の中心に位置する脳幹の機能も上がり、ここから全身に伸びる自律神経系の機能も上がります。そのため、精神が安定します。

酸素は、体内に多くなりすぎると活性酸素の発生につながり、有害なものになりますが、腹式深呼吸で取り入れた酸素は、決して過剰になることはなく、プラスにのみ働きます。

腹式深呼吸により下腹を大きく動かすと、同時に横隔膜が上下に大きく動きます。この、横隔膜と腹膜が連動する動きは、内臓を内側から伸縮させすべての器官の血流が著しく高まります。これによって、特に肝臓、腎臓、心臓、腸、膵臓 等、すべての臓器の機能が高進します。

やり方

① 口からゆっくり息を吐く

このとき、下腹を最大限へこませながら、完全に息を吐ききる

② 鼻から、いっぱいに息を吸い込む

このとき、下腹を最大限ふくらます

③ これを、交互に繰り返す

※ 姿勢は、仰臥、正座、あぐら、いすなど、どんな形でもかまいません。

力を抜いて、リラックスして行います。

ポイントは、下腹を大きく動かすことと、はく息を少しずつゆっくり出すことです。

慣れてくると、腹部が軟らかくなって動きが大きく、ペースもゆっくりになります。一分間一呼吸が、理想です。

一回に5分間行うと、効果的です。トータル60分間行うと、大きな効果が期待できます。

本や新聞を読みながら、デスクワークをしながら、テレビを見ながらでもできます。慣れれば、歩きながらでもできます。日常生活の中で習慣化するといいでしょう。

【金魚運動】

金魚運動は、全身運動にもなり、身体機能の調整や治療効果もある総合的な体操です。

脊柱を中心に、全身をリズミカルに水平方向にくねらすことにより、多くの効果が現れます。脊柱・骨盤をはじめ骨格系全体が整斉され、血液・リンパの循環が盛んになり、自律神経のバランスが整います。内臓全体も機能が高進し、特に、腸、心臓、腎臓、肝臓の機能が上がります。

【毛管運動】

毛管運動を行うと、血液とリンパの循環が大幅に改善されます。

手足を垂直に挙げて微振動を加えると、重力の作用と筋肉の伸縮運動によって手足の血液とリンパ液が身体の中心に移動します。手足の組織にある体液が最小限の量になると、抹消血管とリンパ管は、一気に機能回復が起こります。そのため、抹消の動脈と静脈の活動が活発になり、毛細血管のバイパスが活動をはじめます。その結果、全身の血流が盛んになります。

毛管運動は、1日3回以上行うと効果的です。

やり方

  • あお向けに寝て身体の力を抜く(畳など適度に硬いものの上がよい)
  • 手足を垂直にのばす

足裏を水平にし、手指の間をかるく離してのばす

  • 手足を同時に微振動させる(前後にかるく振る)30秒~1分間
  • 手足を上にあげたまま1分間休む(この時がもっとも重要)

【アイソメトリックス&ストレッチング】

人が日常生活で行動するとき、筋肉の働きが大変重要です。特に、脚、腰、肩、首の筋肉は、体を支え、バランスをとってスムーズに動くために主となる部分です。疲労や老化によって真っ先に疲れや衰えを感じるのは、これらの筋肉です。

ポイントの筋肉を強化しておくことは、疲労や老化の予防のためにも必要なことです。また、日常のアクシデントの予防にもつながります。

筋肉を効率よく強化する方法では、アイソメトリックスが特に優れています。短時間で負担が少なく実行できる、合理的なトレーニングです。高齢者でも、簡単に行えるものです。

また、日常生活での筋肉疲労を残さないためには、軽いストレッチングを行うと効果的です。ストレッチングを行うことによって、筋肉内に乳酸がたまって硬くなり、コリや疲労を起こすのを防ぐことができます。

トレーニングは、入浴中に行うのがベストです。数分で簡単にできます。入浴によって、血液循環が盛んになり、筋肉に酸素や栄養素がスムーズに送られるため、筋肉細胞の発達が促進されます。入浴により全身循環が盛んになって十分なウォーミングアップができているので、筋肉に負荷をかけても筋肉細胞を傷めることはありません。また、入浴後は、体を休めるか眠ることになるので、その間に筋肉細胞は急速に発達することができます。

アイソメトリックスは、ストレッチとセットで行うことで、相乗作用により効果が高まります。ストレッチにより筋肉組織内の循環を高め疲労物質を排除してから、筋肉細胞に適度な刺激を加えることによって、筋肉は急速に発達します。

 

アイソメトリックスのやり方

アイソメトリックスの基本は、発達させたい筋肉に対して、70~80%の負荷を

7秒間一定の状態で持続します。1日1回で、十分な効果があります。

ストレッチングのやり方

ストレッチングの基本は、疲労やコリのある筋肉や腱を伸ばすことで組織内の循環を

促進して、柔軟で健康な細胞に戻すことです。これによって、腱や筋肉の硬化や炎症

を防ぎます。

ほぐしたい筋肉を軽く伸ばして、しばらくその状態を維持します。筋肉の硬化程度に

よって持続時間は異なりますが、10秒から40秒間伸ばしたままの姿勢を保ちます。