(1)腹式深呼吸
下腹を大きく動かしながらゆっくり呼吸をすることによって、横隔膜が動き肺全体が大きく膨らみます。こうして肺の内部の圧力が上がり、酸素の取入れが効率よくなって血液中の酸素の量が増えます。酸素量が増加すると、代謝が上がり細胞の基本機能が高まります。脳にも酸素の供給が増加して、脳細胞の機能が高まります。その結果、脳の中心に位置する間脳・脳幹の機能が高まり、ここから全身に伸びる自律神経系が安定し、精神が調和します。
酸素は、体内に多くなりすぎると活性酸素の発生につながり、有害なものになりますが、腹式深呼吸で取り入れた酸素は決して過剰になることはなく安定します。
腹式深呼吸により下腹を大きく動かすと、それにつれて横隔膜が上下に大きく動きます。この、横隔膜と腹膜が連動する動きは、腹部を内側から伸縮させ内臓全体の血流が高まります。血流が高まると特に肝臓、腎臓、心臓、腸、膵臓 等の機能が上がり、さらに他のすべての器官・臓器の機能が高まります。
【やり方】
- 口からゆっくり息を吐きながら下腹を最大限へこませ、息を吐ききる
吐く息を長くするほど効果が高い
- 鼻からいっぱいに息を吸い込みながら、下腹(丹田)を大きくふくらます
吸う息は普通のスピードで良い - これを交互に繰り返す
- 姿勢は、仰臥、正座、あぐら、いすなど、どんな形でもかまいません。
力を抜いてリラックスして行います。
ポイントは、下腹を大きく動かすことと、吐く息を少しずつゆっくり出すことです。慣れてくると、腹部が軟らかくなって動きが大きく、ペースもゆっくりになります。
1分間1呼吸がベストです。1回に2~5分間行うと効果的です。1日に複数回、トータル30分くらい行うと大きな効果が期待できます。
本や新聞を読みながら、デスクワークをしながら、テレビを見ながらでもできます。
慣れれば、歩きながらでもできます。日常生活の中で習慣化すると良いでしょう。
度々行っていると、普段の呼吸が胸と腹とが同時に動く自然で理想的な『腹胸式呼吸』になります。
(2) アイソメトリックス
人が日常生活で行動するとき、筋肉の働きが大変重要です。特に、脚、腰、肩、首の筋肉は、体を支え、バランスをとってスムーズに動くために主となる部分です。疲労や老化によって真っ先に疲れや衰えを感じるのは、これらの筋肉です。
主要な筋肉を強化しておくことは、疲労や老化の予防のためにも大事なことです。また日常の転倒などアクシデントの予防にもなります。
筋肉を効率よく強化する方法では、アイソメトリックスが特に優れています。短時間で負担が少なく実行できる合理的なトレーニングです。高齢者でも楽に行えます。
トレーニングは、入浴中に行うのがベストです。数分で簡単にできます。入浴によって血流が盛んになるため、筋肉内に酸素や栄養素が円滑に送られ細胞活動が活発になり、筋肉細胞の発達が効率アップします。入浴により全身循環が盛んになり十分なウォーミングアップができているので、筋肉に負荷をかけても筋肉細胞を傷めることがありません。また入浴後は、体を休めることが多いので、その間に筋肉細胞は効率的に発達することができます。
アイソメトリックスは、ストレッチとセットで行うことで相乗効果が高まります。ストレッチにより筋肉組織内の循環を高め疲労物質を排除してから筋肉細胞に適度な刺激を加えることによって、筋肉は効率よく発達します。
【アイソメトリックスのやり方】
アイソメトリックスの基本は、発達させたい筋肉に対して70~80%の負荷をかけ、7秒間動かさず一定の状態で維持する。
1日1回で十分な効果が上がる。
(3) ストレッチング
また日常生活で筋肉や関節に疲労を残さないためには、軽いストレッチを行うと効果的です。ストレッチを行うことによって、筋肉内に疲労物質がたまって硬くなり、コリや疲労を起こすのを防ぐことができます。さらに硬くなった筋膜(ファシア)がほぐれて筋肉が動きやすくなるためコリや炎症が解消され、筋肉疲労が起こりにくくなります。
ストレッチは、入浴中に行うのがベストです。入浴によって血流が盛んになるので、さらに筋肉がほぐれやすくなります。
【ストレッチングのやり方】
ストレッチングの基本は、疲労やコリのある筋肉や腱を伸ばすことで組織内の循環を促進して、柔軟で健康な細胞に戻すことです。これによって、腱や筋肉の硬化や炎症を防ぎます。
ほぐしたい筋肉を軽く伸ばして、しばらくその状態を維持します。筋肉の疲労・硬化程度によって持続時間は異なりますが、10秒以上伸ばしたままの姿勢を保ちます。
とくにコリや痛みが強い場所は、30~40秒間行うと効果が高くなります。
気持ちいい程度に行うのが、もっとも効果的です。