飲・食

ハトムギの効用

体内浄化食の最高峰

人の身体は、37兆個の様々な細胞で成り立っています。それぞれの細胞が精妙な連係で相互に助け合いながら身体全体の健全なバランスを保っています。一部の細胞がわずかに衰えても、全体のネットワークが微妙にバランスを崩しても、身体全体の機能が狂ってしまいます。人体は、この世で最も複雑な構造物です。これをいつまでもベストの状態に保っておくためには、細胞の環境と神経系のコントロールシステムを常に最良にしておくことが必要です。

細胞の環境とは、血液です。細胞は、その周りを絶え間なく循環している血液によって栄養素や酸素を受け取り生命活動を行っています。また細胞が排出する老廃物は、血液によって体外に運び出されます。この細胞の活動が滞りなく行われていれば、身体は健全に機能することができます。そして全身細胞の秩序をコントロールしてバランスを保っているのは脳です。脳の中枢から神経系のネットワークを通じて、身体器官全体を整然と働かせています。

脳細胞、神経細胞をはじめ、すべての体細胞は血液によって養われています。血液の質が、重要な生命活動のカギになります。良質な血液の条件は、血液細胞の質が良く、血漿成分(液体成分)の質とバランスが良く、老廃物で汚染されていないきれいな血液です。きれいな良質血液が細胞を養っていれば、人体は常にイキイキと活発に働くことが出来ます。

良質血液を造る最大の条件は、食生活です。現代人の食生活の乱れは、限度を超えています。自然食を実践している人でも、血液が汚染されていることがよくあります。血液の浄化は、健康のベースです。食材の質と、食事の摂り方を、より向上させていくことが必要です。

現代人の生活は、食生活、精神生活、環境、人的環境など、どこを見てもマイナス条件に囲まれています。普通に暮らしていて、健康になれない人が多いのが現状です。そのため、ある程度は補助手段が必要になります。ちまたには様々な健康法、手当法、補助食品等があふれています。中でも、体内の老廃物を排出する方法としては、ハトムギが群を抜いています。ハトムギは、体内に滞る不要なものを、ことごとく排除していきます。

体内に溜まる不要物質は、余剰水分、脂肪、細胞の分解産物、炭水化物・脂肪・タンパク質の代謝産物(燃えカス)、活性酸素、変異細胞、コレステロール、中性脂肪、過剰無機物等々、実に様々なものがあります。これらの老廃物は、血管壁や結合組織(細胞同士をつなぐ組織)に蓄積して、器官の衰えや炎症、変性、破壊を起こします。蓄積した場所によって、あらゆる病気に発展していきます。

ハトムギは、これらの老廃物(毒素)を効率よく排泄して、炎症や痛みを取り、むくみや膿疱や脂肪瘤(こぶなど老廃物の塊り)、結石を排出します。イボ、ウオノメ、ポリープ、筋腫など腫瘍細胞も排出します。胃、腸、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓の機能も高めます。血管、リンパ管、心臓など循環器の機能を高めます。免疫システムを整えて、アレルギーやリウマチを改善に導きます。糖尿病、関節炎、神経痛、筋肉痛等を改善します。また、筋肉や関節を軟らかくし、コリ、こわばり、痛み等を取ります。以上のように血液をきれいにして、各器官の機能を向上させることで皮膚細胞の代謝が活発になり、あれ肌、シミ、ソバカス、ニキビ等も解消され、肌がきれいになってきます。母乳を与えている人は、分泌が旺盛になります。女性ホルモンの分泌が促進されるので、更年期障害や骨粗しょう症の予防にも有効です。

ハトムギの成分

ハトムギは、このように、効用の範囲がきわめて広い食品です。栄養価も高く、タンパク質、脂質、ビタミンB1、B2、パントテン酸、ナイアシン、ミネラル等を豊富に含んでいます。有効成分は、コイクセノライド、コイクネール、ゲルマニウム等が含まれています。

ハトムギは、通常は胚乳のみが使われますが、有効成分の大半は殻、薄皮、渋皮の部分に含まれています。胚乳とその他の部分との成分含有量の差は、数十倍です。その豊富な有効成分のすべてを効率よく吸収できるのは全粒ハトムギです。

食品に含まれている自然な形の栄養成分は、それぞれの分子同士が互いに結合して存在しています。食物が口から取り入れられ、唾液、胃液、腸液、膵液等の消化液の作用を受けて、結合が外れ個々の成分が単体に分かれます。栄養成分はこの状態で腸壁から吸収されたとき、体内で充分に活用することができます。ハトムギを炒って煎じるハトムギ茶では、成分の2割以下の抽出率で大半はカスとして捨てられてしまいます。ハトムギを粉末にして軽く焙煎して摂ると、吸収利用率が上がります。

ハトムギの歴史

ハトムギが食用や薬用に使われてきた歴史は大変長く、およそ1500年前、中国・後漢時代の最古の薬草書「神農本草経」に記載されています。この書には、365種類の薬草が詳しく解説されており、ハトムギの記載もあります。薬草を上薬、中薬、下薬の3種類に分け、ハトムギは上薬に分類されています。上薬は、長期間にわたって毎日食べ続けても良いもので、そのほとんどが食品です。中薬は、病気の時だけに一時的に使うもので、普段は摂ってはいけないもの、下薬は、経験のあるものが注意して使用しないと、危険を伴うものとされています。その後、著された薬草書「本草綱目」(約500年前)にも、ハトムギが詳しく記載されています。日本では、江戸時代の儒学者・貝原益軒が著した「大和本草」(1708年)に、解説されています。

食用としては、インド、マレーシア、タイ、ベトナム、韓国、中国などアジア全域で古来食べられてきました。日本では、享保年間(1716~1736)に伝わったとされています。現在では、広く食用・薬用に多用されています。