飲・食

飲み物の選び方・飲み方

飲み物はなぜ必要か

水は、人にとって最も重要な栄養素です。あらゆる栄養素は、水がなければその機能を果たすことができません。栄養素は、水なしでは体内に浸透も移動も反応もすることができません。体内の代謝(生命活動)は、すべて水を介して営まれています。視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚などの感覚器官、分解、吸収、合成、同化、循環、燃焼、排泄などの代謝にいたるまで、体内の物理的・化学的なあらゆる生命活動は、水が媒体となります。
体内の水分が2%減少するだけでのどが渇き、尿量が減少し、6%減少すると、激しい渇き、舌の乾燥、動悸が起こります。10%減少すると、著しい循環障害、意識障害、けいれんが起こり、15~20%減少すると、死にいたります。
生命活動にとって重要な水分の摂り方によって、健康は大きく左右されます。

水は、自然の湧水、清水、地下水が良いのですが、それを利用できる環境にいる人は少ないでしょう。自然水に近い良質な水を手に入れるには、家庭用浄水器で湧水に近い水質に浄化できる能力の浄水器を使うのが良いでしょう。原則的には、煮沸せず生水を利用することで水本来の機能を果たすことができます。
自然水をボトリングした市販の水を利用する場合は、有害物質が含まれないのはもちろん、加熱しないでろ過したもの、ろ過装置は安全性の高いものという条件を満たすものでなければなりません。条件を満たせば、天然炭酸水やミネラルウォーターも良いでしょう。

【飲み方】
水の必要量は個人差が大きいので、体が欲する時、適量を飲むことです。
夏場の水分補給は、塩分を同時に摂らなければ脱水に陥りやすくなります。冬、寒い時は、湯煎して摂るようにします。水が最も体に浸透しやすい温度は、体温に近い30~40℃位です。特に体調が悪い時に冷たい飲料を飲むと、悪化する場合があります。
飲み物の選び方
飲み物の素材を選ぶ条件は、自然栽培、自然加工、化学物質や不要な添加物がなく、容器が適切、保存状態が良い、鮮度が良いなど、素材の成分を変性させない物を選びます。加熱、抽出、乾燥、発酵などの加工をするものは、適切な工程を経たものを確認します。
どんな飲み物も、選択基準は基本的に同じです。

漢方薬であった茶が日常的に飲まれるようになってから、現在までの歴史の中で多種多様なお茶が飲まれるようになりました。その代表が、多くの人に広く飲まれている緑茶です。
お茶は、緑色も茶色もそれぞれ効果がありますが、選ぶ際の基本条件は同じです。自然栽培、製造工程が適切、色素、アミノ酸、安定剤、防腐剤など添加物を一切使わずに製品化されたお茶です。そして保存状態が良く、鮮度の良いお茶です。抹茶、粉茶などは、農薬や化学添加物が多く使われたものが多いので要注意です。
茶は種類によって成分の違いはありますが共通の効能は、抗菌、血液浄化、腸内環境浄化、抗酸化の機能と、循環器、肝臓、腎臓、免疫等を改善する機能があります。
陽性体質の人は緑茶、陰性体質の人は三年番茶、ほうじ茶、紅茶などが適しています。

【飲み方】
お茶の入れ方は、急須に湯を注いで出すか、ティーポットに茶葉を直接入れて湯を入れ茶こしでろ過する方法がよいでしょう。湯の温度は、目的によって決めます。テアニン(膵臓、代謝に有効、旨味成分)を摂る場合は60度位、カテキン(抗酸化物質)を多く摂る場合は、90度の湯を注ぎます。テアニンは、80度以上の温度で破壊されます。
最適なのは水出しです。常温で抽出すると、成分破壊がなく、テアニンが多く出ます。カテキンは少なくなり、マイルドなお茶になります。

◇水出し法……ガラスポットに水を入れ、茶葉を入れて約10時間放置します。これを茶こしでろ過してガラスポットに入れ保存します。夏は冷蔵庫、冬は常温で保存します。保存したお茶は、1日で飲み切ります。残った場合は、捨てます。お茶類は、長時間経つと、変質して有害物質が発生することがあります。

薬草茶(野草茶)、ハーブティー

薬草やハーブは、それぞれ独自の薬効があります。薬効と香りと味を考え合わせて、自分に合うものを選びます。
漢方薬として使われる植物は数百種類、ハーブは約500種類ありますが、それぞれ特質があり個々の体質、病気の有無、年齢など、身体条件が違うので、適当に選んで飲むのは、リスクがあります。日常の飲み物として飲むものは、身体条件を考えなくてもよいものを選ぶことです。素材の特性は、バランスがよく、広範囲に効果があり、おいしくて様々な食物とも相性が良いものを常飲するのがよいでしょう。
日常的なお茶の例として、三年番茶、たんぽぽ、ヨモギ、ハトムギの4種ブレンドはお勧めです。健康維持にとって重要な要(かなめ)の腸、肝臓、腎臓の機能向上と、血液浄化の効能があります。

【飲み方】
飲み方はお茶と同じで、ポットに入れて湯で出すか、水出しにします。

コーヒー

コーヒーは、近年多くの効能が明らかになりました。肝臓、心臓、血圧、抗癌、抗酸化などの効能があります。またカフェインは、脳を刺激して、脳活動を高める効果があるといわれています。コーヒーの香りは精神安定作用があるので、香りだけで落ち着くという経験をしている人も多いでしょう。
コーヒーの有効成分は、カフェイン、カフェー酸、クロロゲン酸、タンニン、ポリフェノール、ニコチン酸(ナイアシン)、トリゴネリンなどがあります。過去には、カフェインは胃や神経に良くないなどと言われていましたが、近年の研究では、脳や循環器にプラスになることが明らかになりました。
コーヒー豆は、自然栽培、自然加工、天日干しで保存状態が良く、新鮮な豆を選びます。
ベストは、鮮度の良い生豆を購入して、自分で焙煎することです。

【飲み方】
焙煎は、直火ではなく間接加熱により低温でゆっくり加熱したものが良いです。焙煎後あまり時間をおかず、手動式、セラミック刃のコーヒーミルで挽いて抽出します。ろ過する素材はフランネルまたは、セラミックスを使います。水は良質な天然水または同等の水を使い、セラミックス、陶器、ガラス等の器具を使い、沸騰させず90~95度の湯で丁寧に出します。
まろやかな味が好みの人は、一つまみの塩を入れると良いでしょう。体に対しても、ソフトになります。
さらに良いのは、水出しです。水出しコーヒーは、余計な成分が溶出しないので、味も効果も良くなります。
ポットに挽いた豆を入れ、適量の水を入れて1~2時間放置し、ろ過して飲みます。細挽きは短時間、粗挽きは長時間置きます。水出しコーヒー用のドリッパーで出すと、時間がかかり過ぎてコーヒー成分の変性が起こり、味が落ちることがあります。

ヤンノー、コーレン

ヤンノーは、小豆を煎って粉末にしたものです。ヤンノーは、マクロビオティックで昔から多用され、腎臓機能を高めるとされています。また利尿、保温効果があるので、陰性で冷え性の人には適しています。
コーレンは、レンコンの乾燥粉末です。コーレンもマクロビオティックでは多く使われてきました。コーレンは、呼吸器(のど、気管支、肺)の機能を高めるといわれています。
ヤンノー、コーレンのどちらも、漢方の原理に基づいたものです。

【飲み方】
鍋に水とヤンノーを入れ、中火で10~15分、弱火で30分加熱します。火を止める10分前に塩を適量(0.2~0.3%)入れます。少しトロミがある飲み物になります。
コーレンも同様にして飲みます。

甘酒

甘酒は、麹菌の栄養素と有効成分が多量に含まれます。血行促進、胃腸促進をはじめ、器官全体の機能を高める効果があります。
原料の米と米麹を良質なものを使い、糖化が適切に行われたもので、砂糖などを加えてない物を選びます。保存状態と鮮度も見る必要があります。

【飲み方】
鍋を2つ用意し、1つは湯を沸かします(90度)。1つには、甘酒(原液)を入れ弱火にかけて、“へら”でゆっくりかき混ぜながら、約60度まで温めます。温めた甘酒(原液)を湯の鍋に入れ、少しかき混ぜて強火にします。塩を適量(0.2~0.3%)入れ、沸騰直前に火を止め蓋をして、5分間放置してから飲みます。おろし生姜を少し入れると、よりおいしくなります。

羅漢果

羅漢果は、中国で呼吸器の薬として200年前から使われてきたものです。のど、気管支、肺、膵臓、抗酸化の効果があります。
選ぶ条件は、自然栽培、水抽出法、添加物を入れていないものです。市販のほとんどの製品は、砂糖、甘味料が大部分を占め、羅漢果はわずかしか入っていません。
羅漢果の効果を得るには、原液100%でなければなりません。

【飲み方】
水、湯などに羅漢果原液を入れ、薄めて飲みます。
【例】150mlの水または湯に、2~3g入れて混ぜます。

アルコール飲料

アルコール飲料は、質の良いものを適量飲む場合は、体に有効に働きます。しかし飲み過ぎは、脳、肝臓、心臓、血管、神経系にダメージを与えます。
アルコールの適量は個人差が大きいので、数字で判断することはできません。ひとつの目安は、アルコール飲料を飲んでいる時に心身が快適に感じるか、不快になるかで判断できます。また飲んだ翌日の体調が普段と変わらず、寝起きが快適で元気よく活動できるのであれば、アルコールの処理機能が高いといえます。その逆に飲んでいる時から、頭痛、動悸、発熱感、倦怠感など不快になる人は、アルコール処理機能が低いといえます。
アルコール処理の酵素分泌が多いか少ないかは、遺伝によるものです。肝臓機能とは無関係です。日本人は、遺伝的にアルコール分解酵素やアセトアルデヒド分解酵素が多い人は少ない民族です。アルコール処理機能が低い人が、訓練で強くなって飲み続けると、肝臓障害を起こしやすくなります。
アルコール飲料の中でも、最も栄養素と有効成分が多く含まれているのは日本酒です。日本酒は、栄養素が豊富に含まれ、有効成分が約200種類も含まれています。そのため適量を飲んだ場合は、血流が良くなり各器官の機能が上がり、栄養の補給にもなります。
日本酒の次に栄養素と有効成分が多いのは、ビールです。ビールは、素材と製法が良いものでなければ、効果は期待できません。適切に醸造されて、加熱処理をしていない生ビールがベストです。最近は、ほとんどに人が缶ビール飲んでいますが、味も効果も低く、缶の内面コーティング材が溶出して肝臓、内分泌系に害をおよぼします。ビールは、瓶生ビールがベストです。
次に良いのが、ワインです。特に赤ワインはポリフェノール(抗酸化物質)が豊富に含まれており、活性酸素の抑制には効果があるといわれています。市販のワインは、添加物が非常に多い飲料ですので、素材、製造法の適切なものを選びましょう。

【選び方】
アルコール飲料を選択する基準は、原料、製造法、添加物、容器、保存法などを見ます。
その条件によって、味と効果が大きく違います。アルコール飲料を飲むなら、楽しいだけではなく体にもメリットがある飲み方の方が、自分のためです。

【飲み方】
アルコール飲料を飲む際に注意すべきことは、自分の適量を知っておくこと、体調とタイミングを考えて飲むこと、質の吟味などを心得て楽しく飲むのが良いでしょう。
参考までに、オックスフォード大学とロンドン大学の共同研究によると、アルコールは適量飲用でも、脳の『海馬』(記憶の中枢)が萎縮して認知症になりやすくなるという報告があります。くれぐれも、飲み過ぎないようにしましょう。