光は脳に作用する
光は、人の心身に大きな影響を与えます。光は、それぞれの波長により固有の振動数をもつ電磁波です。人の身体を構成する原子は種類によって個有の振動数をもち、常に振動しています。身体の原子の振動が光の振動に反応することによって、心身に影響を与えます。
光は視神経により電気信号に変換して脳の視覚野に入り、辺縁系と視床下部に信号が伝えられることにより、内分泌系や自律神経系の働きに影響があるということが明らかになりました。
例えば壁や床など全体が赤い色の部屋にいると、体温が上昇し、心拍数や呼吸数が増加します。青い色の部屋にいると体温は下がり、心拍数や呼吸数が減り、心が鎮静化するという結果が多くの実験によって検証されています。
アメリカの学術誌(メモリアルコグニション)に、アンドリューとエリオット博士が、深層意識における色と集中力の関係を発表しました。野村順一教授は、色が意識に与える影響を様々な実験から科学的に実証しています。
色とは
色とは、物などに光が当たり反射した光が目から入り、視覚を通じて脳に送られた電気信号により感じた感覚です。光・物(対象物)・視覚の関係の産物であり、物に色があるわけではありません。りんごが赤く見えるのも、空が青く見えるのも、視覚神経からの信号を脳の知覚により解析して感じている脳内現象です。
色の認識は心理物理的な主観的感覚ですから、人により感じ方は違います。したがってどのように見えているかは、本人のみのものであり他人には分かりません。
色の3要素
- 色は光と目と物の相互作用による独自の感覚
- 色は条件次第で変化する主観的体験
- 色は心理物理的な現象
皮膚が色を感じる
色の違いは波長の違いであり、人体に与える影響もそれぞれの色によって違います。色
(光)は視覚で認知し、物理的・生理的刺激を与えること以外にも人体へ影響を与えます。
実験によると、眼の不自由な人が暖色系の部屋に居ると体温の上昇が見られることから、人間は皮膚でも色を感じていることが明らかになりました。
目で色を見ること以外に、皮膚は好む色を吸収し、嫌いな色を拒否します。したがって皮膚が好む色を身に着ければ心身ともに健康にプラスになり、皮膚が嫌う色をムリに着用するとストレスとなり体調に悪影響します。
色彩心理……色が心に与える影響
赤 | ポジティブ印象 | 華やか・積極的・情熱的・生命力・愛 |
ネガティブ印象 | 圧迫・怒り・嫉妬・危険・攻撃的 | |
ベースイメージ | 活力や食欲を増進させるなど、アクティブな印象 |
緑 | ポジティブ印象 | 平和・安らぎ・調和・公平・自然 |
ネガティブ印象 | 疲れ・弱々しい・未熟 | |
ベースイメージ | 目に優しい色。集中力を保つ。リラックス効果 |
青 | ポジティブ印象 | 誠実・冷静・爽やか・涼しげ・知的 |
ネガティブ印象 | 冷淡・消極的・孤独・憂鬱 | |
ベースイメージ | 青は最も人気の高い色で、広く使われる |
黃 | ポジティブ印象 | 元気・希望・賑やか・若さ |
ネガティブ印象 | 幼稚・軽薄・未熟 | |
ベースイメージ | 最も明るい印象色。認識しやすく注意喚起の色 |
紫 | ポジティブ印象 | 高貴・神秘的・上品・高級 |
ネガティブ印象 | 不満・不安定・二面性・嫉妬・下品 | |
ベースイメージ | 高貴、優美なイメージ |
桃 | ポジティブ印象 | 安らぎ・繊細・可愛らしさ・幸福・愛情 |
ネガティブ印象 | 不安定・幼稚・弱さ | |
ベースイメージ | 不安を和らげ、優しい気持ちをかもす |
茶 | ポジティブ印象 | 大地・穏やか・温和・伝統・保守的 |
ネガティブ印象 | 地味・頑固・陰気 | |
ベースイメージ | 自然を感じさせ、温もりや居心地の良さ。生活の中に溶け込む |
橙 | ポジティブ印象 | 家庭的・安心・健康・親和・陽気 |
ネガティブ印象 | 安っぽい・わがまま | |
ベースイメージ | 楽天的で陽気な印象。赤と同じく食欲増進や活動的にする |
白 | ポジティブ印象 | 清潔・幸福・真実・純粋・爽やか・勝利 |
ネガティブ印象 | 孤独・自閉・空虚・薄情 | |
ベースイメージ | すべての光を反射する最も明るい色。クリーンなイメージ |
灰 | ポジティブ印象 | 控えめ・落ち着き・穏やか |
ネガティブ印象 | 不安・曖昧・無気力・空虚・孤独 | |
ベースイメージ | ネガティブイメージが目立つ色でもあるので使い方に注意 |
黒 | ポジティブ印象 | 格式高い・上品・力強い・威厳・重厚 |
ネガティブ印象 | 不吉・恐怖・絶望・悪・汚い・負け | |
ベースイメージ | ネガティブイメージが目立つ色でもあるので使い方に注意 |
- 色の印象は、見た人や状況に応じて変化します。また上記は単体で見た時の印象ですが、2つ以上の色を組み合わせることでこれらの印象は変わります。
光が血液に影響
近年、光が血液細胞に作用することが解明されました。赤血球の数とヘモグロビンの比率は暗い場所では減少し、明るい場所では増加することが明らかになりました。夜間勤務の人たちは、日光に当たらないために赤血球の数もヘモグロビンの量も減少してくるという結果が現れています。
赤血球の減少は、酸素不足による症状として頭痛、めまい、倦怠感、循環器低下、筋力低下、疲労などが現れます。また自律神経系、内分泌系、精神状態、脳機能にも悪影響が現れます。
光の不足は、体内時計を狂わせ、睡眠、月経などの障害を起こすことにもなります。認知症では昼夜逆転の行動(せん妄や深夜徘徊など)が問題となっていますが、日中に強い「光」を浴びることにより体内時計が正常化して症状が改善したという報告があります。
日光
太陽の光は、すべての生物が生きていくために必要なエネルギーの源です。日光なしで生きられる生物は、ごく一部の特殊な例のみです。人々は、太古の昔から太陽とともに生活し、計り知れないほど多くの日光の恩恵に浴してきました。
日光のエネルギーは、身体の代謝(生命活動)を活発にし、自律神経、内分泌、免疫システム、精神、造血機能等を高め、ビタミンDを生成し、心身の健康状態を維持する大きな効果があります。また認知症、骨粗しょう症、糖尿病、精神疾患の予防にも有効です。さらに成長期の子供には、健全な発達を促します。
日光は、適度な量を受けることが重要で、不足も過剰もNGです。適度な光線量は、「快適に感じる程度」です。太陽光の照射量は、季節、気候、場所、高度、時間帯、服装、露出度、化粧、年齢、体調、感受性等々、条件によって大きな差が出ます。したがって日光浴の時間などの適切な行い方は、快適な感覚に従うのがベストです。
光と体内時計
人の身体は、日々のリズムを整えるための調節機能が備わっています。この機能は体内時計と呼ばれ、脳を中心にして他の器官などにも内在しており、1日約24時間の周期になっています。脳の体内時計(中枢時計とも言われる)は間脳にある視床下部に存在し、光に反応して自律神経をコントロールしています。
人は、日中の明るい光が目に入ると交感神経が働き活動的になります。そして少し赤みを帯びた長い波長の光に変わる夕方から、活動系の交感神経から休息を司る副交感神経にゆっくりと変化していき夜の8時頃に切り変わります。睡眠を促すホルモンのメラトニンは、起床時から14~15時間後に分泌され始めます。メラトニンが充分に分泌されると、深く良質な睡眠が得られます。
現代人の多くは、情報化社会の中で仕事中も、プライベートでも、スマホ、パソコン、テレビなどを長時間見ています。これらの機器からは主にLEDの白い光(ブルーライトを含む)が出ており、人々はそれを近距離から直視しています。人は本来昼行性の動物のため、夜にブルーライトを含む白い光を大量に浴びることは目を酷使するだけではなく、脳が昼間と勘違いしてメラトニンの分泌を抑制してしまいます。したがって快適な眠りが得られず、睡眠不足からいろいろな病気や事故のリスクが増えます。したがって就寝の1~2時間前(体温が下がり始める時間帯)は、スマホやパソコンを見ないようにすることです。部屋の照明は、温色系の白熱球で少し暗めの照明にするとリラックスしやすくなります。睡眠中は、照明を消して暗くする方が深い睡眠に入ることができます。
朝は窓からの自然光で起床ができれば最適です。朝5分ほど太陽の光を浴びると、脳内からセロトニンが分泌されます。起床時にセロトニンが充分分泌されると、夜のメラトニンの分泌を促します。
ブルーライト
電磁波は高周波数(波長が短い)になるほど人体に強い影響があり、低周波数ほど影響が少なくなります。 波長が0.01nm以下のガンマ線、10nm以下のX線(=レントゲン)、 380nm以下の紫外線、約380~760nmの可視光線、それより大きくなると、赤外線、電波、マイクロ波と続きます。 ブルーライトは可視光線のうちもっとも高周波数である青い光のことで、波長は380~500nmです。青空を見ても、白いライトを見ても光の3原色で ブルーライトが含まれます。 ブルーライトは波長が短く水晶体で吸収できないため、目に悪影響(青色光網膜傷害)があるとされています。 他にも体内リズムの乱れ(メラトニンの分泌が抑制)や、波長が短いため光が散乱しやすくピントが合わせにくくなるため、調節機能へ負担が大きくなります。
色温度
光は、明るさ(照度)と光の色(色温度)で構成されています。「色温度」は、ものの見え方や人の心理に影響を与えます。
色温度が低いほどゆったりと暖かく、色温度が高いほど明るく元気でクールになります。5000K以上の白っぽい光は覚醒効果があるので、オフィスやリビングなどは昼白色・昼光色の照明が適しています。一方寝室ではリラックスして眠りにつくために、穏やかな光の白熱球の照明が適しています。また厨房・キッチンでは味覚を鋭敏にすると言われる白系の照明を、食卓ではオレンジ系の光を使うと、食事がおいしそうに見えます。お酒の席などは、オレンジ系の光で薄暗くするのが良いでしょう。
自然界のリズム
単位面積あたりに届く光の量を「照度」といいます。日の出前の光は照度は低く、影もなく輝きもない灰色と白です。時間が経ち、日が昇ってくると次第に照度も高まり、色は白から青色を帯びていきます。日中の太陽光は、スペクトルの各波長のエネルギー比がほぼ等しいので、光色は白っぽく見えます。太陽が高くなるにつれ、スペクトルの中で赤・橙・黄色の長波長が優勢になってくるため、光は青色から黄みを加えていきます。そして午後になると赤みを帯び、やがて夕暮れの光の色へと変わっていきます。太陽光は、時間とともに照度と色温度が変化します。
本来の人の生活リズムは、太陽を中心に自然界のサイクルが基準になっています。
光の研究【参考】
光と色が、人の脳と心身に与える影響について注目すべき多くの研究報告があります。
◇ 色と自律神経 ( S・V・クラコブ、ロバート・ジェラード)
・赤い色は交感神経を、青い色は副交感神経を刺激する。
◇ 青い光と黄疸
・アメリカの産婦人科病棟では、高ビリルビン血症(新生児の黄疸)の治療に450ナノメーターの青色光を用いている。
◇ 青い光と関節炎(シャロン・マクドナルド博士)
・前出の青色光は、リウマチ患者の痛みの緩和にもきわめて有効である。
◇ 赤い光と偏頭痛(ジョン・アンダーソン博士)
・偏頭痛に悩む7人を最長2年間モニターして、点滅する赤い光が偏頭痛の痛みを止 める効果があった。
◇ ピンク色の独房(アレキサンダー・シャウス)
・バブルガム・ピンク(ピンク色の一種)が身体的に効果を発揮し、苛立った神経を数 分で鎮めた。アメリカの刑務所では、バブルガム・ピンク色の独房が使われるようになってから暴力的行為や攻撃的な行為の発生が激減した。
◇ フルスペクトルの自然光(ジョン・オット)
・動物の寿命は、飼育される光の種類のよっても変化する。
マウスの実験では、ピンク色の蛍光灯のもとでの平均寿命は7.5ヵ月、デイライトホワイト蛍光灯ももとでは8.2カ月だったのに比べ、自然光(フルスペクトル)のもとでははるかに健康であり、平均して16.1カ月であった。