食中毒とは
食中毒とは、人体にとって有害な細菌やウイルスや自然毒などの有害物質が体内に侵入し、これを排除しようとして嘔吐や下痢などの症状などを起こす現象です。
食中毒症状を起こすメカニズムとしては次の2種類があります。
(1) 侵入した有害物質もしくは細菌類が体内で産生した毒素で中毒症状となる場合
(2) 侵入した細菌やウイルスなどの微生物が体内で増殖したために起こる急性胃腸炎
どちらも原因となる化学物質もしくは微生物を摂取しなければいいのですが、その予防策として言われているのは、以下です。
① 付けない……食品、食器類、容器、手指などに菌を付着させない
② 増やさない……菌が増殖する条件を作らない
③ 除菌……菌を除去して清潔にする…加熱、香辛料、酢、アルコールなどにより除菌
食中毒の種類
食中毒は、その原因になる因子・物質によって、(1) 細菌性食中毒 (2) ウイルス性食中毒 (3) 化学性食中毒 (4) 自然毒食中毒 その他に大別されます。
食中毒の直接の原因は、飲食物などに含まれていた有害・有毒な原因物質を摂取することによりますが、その原因物質が直接に毒物として作用する場合と、原因物質が微生物であり、その増殖によって消化管の感染症を発症する場合に分けられます。広義には前者を (a) 毒素型食中毒、後者を (b) 感染型食中毒と呼びます。
(3) 化学性食中毒や (4) 自然毒食中毒はすべて (a) 毒素型食中毒です。
(1) 細菌性食中毒や (2) ウイルス性食中毒では、その原因微生物によってタイプが異なり、(b) 感染型食中毒を起こすものと、(a) 毒素型食中毒を起こすものがあります。
(1) 細菌性の毒素型食中毒の場合、原因となる細菌が食品中で増殖するとともに毒素を産生し、その食品を汚染することが食中毒の原因となります。この場合、増殖後に細菌を殺して除いても、毒素が残っていれば食中毒が発生します。また (1) 細菌性食中毒では、病原菌が消化管内で増殖する際に初めて毒素を生成するものがあり、生体内毒素型食中毒と呼ばれますが、これは感染型と毒素型の中間に位置するものとして、中間型食中毒とも呼ばれます。
出典:厚生労働省令和2年版「食中毒統計資料」
高温多湿となる夏期に食中毒が増加
夏季に発生する食中毒は、多くが細菌性です。夏季には、細菌が繁殖しやすい以下の条件がそろうため食中毒の発生が増えます。
① 水 ② 温度 ③ エサ(有機物)
他の季節でも、冬期には牡蛎が原因とみられるノロウイルスが原因の食中毒が多く発生します。また、キノコやフグなどによる自然毒食中毒は、それぞれその食材の旬にあたる秋から冬にかけて多く発生します。
かつては人から人へ感染が及ばないものといわれていたO-157 などの腸管出血性大腸菌やノロウイルスは患者から患者へ感染するため、食感染症として伝染病とあわせた対策がとられています。
食中毒の種類と原因物質
食中毒は、発生する原因物質により大きく分類されます。
①細菌による細菌性食中毒
②ウイルスによるウイルス性食中毒
③自然毒による自然毒食中毒
④化学物質による化学物質食中毒
⑤寄生虫によるもの
例えば、サルモネラ菌などは毒素型食中毒、カンピロバクターなどは細菌型食中毒、ノロウイルスはウイルス性食中毒、フグ毒などは自然毒食中毒です。
食中毒の原因種類別の一覧表 | ||||
種類
|
原因物質 | 感染源 | 原因となる食品等 | |
細菌性
食中毒 |
サルモネラ | 畜肉、鶏肉、鶏卵 | 卵加工品、食肉など | |
腸炎ビブリオ | 生鮮魚介類 | さしみ、すし、弁当類など | ||
病原性大腸菌 | 人、動物の腸管 | 飲料水、サラダなど | ||
カンピロバクター | ニワトリ、ブタ | 鶏肉、飲料水など | ||
ウェルシュ菌 | 人、動物の腸管 | シチュー、カレーなど | ||
ブドウ球菌 | 手指の化膿 | シュークリーム、おにぎりなど | ||
ボツリヌス菌 | 土壌、動物の腸管、魚介類 | 肉、魚など | ||
セレウス菌 | 土壌、河川 | 飲料水など | ||
エンテロコリチカ エルシニア |
食肉、乳製品、野菜 | |||
ナグビブリオ | 生鮮魚介類 | さしみ、すし、弁当類など | ||
感染症 | O-157 (腸管出血性大腸菌) |
人、動物の腸管 | 牛肉関連食品、サラダ、野菜、飲料水など | |
コレラ菌 | 汚染地区の魚介類、生水など | 魚介類、飲料水など | ||
赤痢菌 | 人、動物 | |||
チフス菌 | 人 | |||
パラチフスA菌 | 人 | |||
ウイルス性食中毒 | ノロウイルス(小型球形ウイルス=SRSV) | 貝類など | ||
自然毒
食中毒 |
植物性 | 毒キノコなどの有毒植物 | ||
動物性 | フグ、毒カマス、毒化した貝など | |||
化学性
食中毒 |
化学物質の食品中への混入 | 洗剤、消毒薬などの薬剤 | ||
有毒性金属による食品汚染 | 微量重金属 | |||
その他 | 油脂の変敗、ヒスタミンなど | |||
寄生虫 | 生の食品など |
①細菌による細菌性食中毒
②ウイルスによるウイルス性食中毒
③自然毒による自然毒食中毒
④化学物質による化学物質食中毒
⑤寄生虫によるもの
例えば、サルモネラ菌などは毒素型食中毒、カンピロバクターなどは細菌型食中毒、ノロウイルスはウイルス性食中毒、フグ毒などは自然毒食中毒です。
◆サルモネラ属菌 (感染侵入型)
潜伏期間 | 10~72時間 |
症状 | 発熱、粘血便、腹痛など |
要注意食品 | 卵、肉など |
生息場 | 家畜やニワトリの腸管内 ◆卵は表面(殻)、中身ともに汚染されている可能性がある消毒済みのものでも要注意 ◆イヌ、ネコ、ミドリガメ、ヘビ等、ペットにも高頻度で生息している |
予防 | 加熱 ◆熱に弱いので加熱調理で容易に殺菌できる 熱処理を行わない食品…卵原料の生クリーム、アイスクリームなど要注意 ◆菌が増殖しないよう早めに食べる |
◆腸炎ビブリオ (感染毒素型)
海水に存在するこの菌は、海産魚介類に付着して食中毒を引き起こします。海水温が上昇する夏季は特に要注意。増殖力が強く二次感染を起こすので、調理器具の扱いには注意。
潜伏期間 | 5~20時間 |
症状 | 下痢、腹痛、発熱など |
要注意食品 | 海産魚介類など |
生息場 | 海 |
予防 | 調理中の二次感染を防ぐ ◆手やまな板など、調理器具などの清浄に努める海産魚介類を調理したまな板や包丁を、洗わずに他の食材の調理に使用すると、別の食材にも移るので要注意 温度管理を徹底する ◆生鮮魚介類はすべて10℃以下に保存する ◆調理器具は、使用後70℃以上の熱湯で殺菌する 加工食品(調理済)はできるだけ早く食べる |
◆黄色ブドウ球菌 (生体外毒素型)
人間の鼻やのど、傷口や「あかぎれ」などに寄生します。菌が体内に直接入って作用するのではなく、食べ物の中で大量に増殖して発生するエンテロトキシンという毒素によって発症します。
この毒素は、加熱しても分解しないので加熱処理では予防できません。また、ブドウ球菌は塩分中でも生き続けることができるので、塩ものでも保冷が必要です。
潜伏期間 | 約3時間 |
症状 | おう吐、下痢、腹痛など |
要注意食品 | 食品全般 |
生息場 | 人の鼻咽喉、傷口など |
予防 | 調理中の手洗い励行 ◆大きなあかぎれなど手に傷がある時はゴム手袋や指サックなどを使うようにして食材には直接触れないようにする ◆くしゃみなどの飛沫から感染することもあるので調理中マスクを付ける |
◆ボツリヌス菌(生体外毒素型)
ボツリヌス菌による食中毒は特に死亡率が高いため、重症になる前の迅速な判断と処置が求められます。酸素のないところで生息する“嫌気性菌”なので、発酵食品や缶詰、真空パックの食品も安心できません。ただし毒素は加熱処理で死滅します。(80℃-30分で不活化)
潜伏期 | 10~40時間 |
症状 | 複視、発声障害、嚥下障害(ものが飲み込みずらくなる)、呼吸障害 など |
要注意食品 | 嫌気性食品(びん、缶詰、レトルトなど) |
生息場 | 土壌 |
予防 | 缶詰、瓶詰め、真空パックが膨れあがっているような食品は避ける ◆この場合、中でボツリヌス菌が増殖している可能性がある |
◆病原性大腸菌 (感染毒素型)
通常、細菌による食中毒は、原因菌が百万個以上体内に入らないと発症しないが、病原性大腸菌O-157はわずか数個から数十個の菌があれば発症します。
発症した場合、早い段階で適切な処置をすれば多くは回復するので、疑わしい時は早めの受診が必要です。
また人から人へと直接伝染することもあるので、感染が確認された後の対応も重要です。
潜伏期間 | 2~9日 |
初期症状 | 発症1日目……下痢、腹痛、かぜ様症状 発症2~3日目……血便、激しい腹痛 |
合併症 発症から5~10日で出現 |
◆溶血性尿毒症症候群(HUS) 尿毒症(腎不全)……血尿や尿量の減少、顔や手足のむくみ 血小板減少症……鼻や歯肉から出血が起こりやすくなる 溶血性貧血……貧血が起こり、顔色が悪くなる◆脳症……意識障害、けいれん、手足のしびれ |
要注意食品 | 肉が最も危険 ◆保存や調理過程で他の食材を汚染しないよう注意 |
生息場 | 動物などの腸管内 |
予防 | 加熱……大腸菌は熱に弱い ◆十分な加熱が必要特にミンチ肉は中まで熱が通るようにする 二次汚染の防止 ◆生の食材は水道水でよく洗う ◆調理器具は乾燥させ清潔を保つ |
食中毒予防のポイント(出典:厚生労働省)
ポイント (1) 食品の購入
■ | 肉、魚、野菜などの生鮮食品は新鮮な物を購入しましょう。 |
■ | 表示のある食品は、消費期限などを確認し、購入しましょう。 |
■ | 購入した食品は、肉汁や魚などの水分がもれないようにビニール袋などにそれぞれ分けて包み、持ち帰りましょう。 |
■ | 特に、生鮮食品などのように冷蔵や冷凍などの温度管理の必要な食品の購入は、買い物の最後にし、購入したら寄り道せず、まっすぐ持ち帰るようにしましょう。 |
ポイント (2) 家庭での保存
■ | 冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったら、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。 |
■ | 冷蔵庫や冷凍庫の詰めすぎに注意しましょう。めやすは、7割程度です。 |
■ | 冷蔵庫は10度C以下、冷凍庫は、-15度C以下に維持することがめやすです。温度計を使って温度を計ると、より庫内温度の管理が正確になります。細菌の多くは、10度Cでは増殖がゆっくりとなり、-15度Cでは増殖が停止しています。しかし、細菌が死ぬわけではありません。早めに使いきるようにしましょう。 |
■ | 肉や魚などは、ビニール袋や容器に入れ、冷蔵庫の中の他の食品に肉汁など がかからないようにしましょう。 |
■ | 肉、魚、卵などを取り扱う時は、取り扱う前と後に必ず手指を洗いましょう。せっけんを使い洗った後、流水で十分に洗い流すことが大切です。簡単なことですが、細菌汚染を防ぐ良い方法です。 |
■ | 食品を流し台の下に保存する場合は、水漏れなどに注意しましょう。また、直接床に置いたりしてはいけません。 |
ポイント (3) 下準備
■ | 台所を見渡してみましょう。ゴミは捨ててありますか? タオルやふきんは清潔なものと交換し てありますか? せっけんは用意してありますか? 調理台の上は かたづけて広く使えるようになっていますか? もう一度、チェックをしましょう。 |
■ | 井戸水を使用している家庭では、水質に十分注意してください。 |
■ | 手を洗いましょう。 |
■ | 生の肉、魚、卵を取り扱った後には、また、手を洗いましょう。途中で動物 に触ったり、トイレに行ったり、おむつを交換したり、鼻をかんだりした後 の手洗いも大切です。 |
■ | 肉や魚などの汁が、果物やサラダなど生で食べる物や調理の済んだ食品にかからないようにしましょう。 |
■ | 生の肉や魚を切った後、洗わずにその包丁やまな板で、果物や野菜など生で食べる食品や調理の終わった食品を切ることはやめましょう。 洗ってから熱湯をかけたのち使うことが大切です。包丁やまな板は、肉用、魚用、野菜用と別々にそろえて、使い分けるとさらに安全です。 |
■ | ラップしてある野菜やカット野菜もよく洗いましょう。 |
■ | 冷凍食品など凍結している食品を調理台に放置したまま解凍するのはやめましょう。室温で解凍すると、食中毒菌が増える場合があります。 解凍は冷蔵庫の中や自然解凍で行いましょう。また、水を使って解凍する場合には、気密性の容器に入れ、流水を使います。 |
■ | 料理に使う分だけ解凍し、解凍が終わったらすぐ調理しましょう。解凍した食品をやっぱり使わないからといって、冷凍や解凍を繰り返すのは危険です。冷凍や解凍を繰り返すと食中毒菌が増殖したりする場合もあります。 |
■ | 包丁、食器、まな板、ふきん、たわし、スポンジなどは、使った後すぐに、洗剤と流水で良く洗いましょう。ふきんのよごれがひどい時には、清潔なものと交換しましょう。酸素漂白剤に一晩つけ込むと消毒効果があります。包丁、食器、まな板などは、洗った後、熱湯をかけたりすると消毒効果があります。たわしやスポンジは、煮沸すればなお確かです。 |
ポイント(4) 調理
■ | 調理を始める前にもう一度、台所を見渡してみましょう。 下準備で台所がよごれていませんか? タオルやふきんは乾いて清潔なものと交換しましょう。そして、手を洗いましょう。 |
■ | 加熱して調理する食品は十分に加熱しましょう。 加熱を十分に行うことで、もし、食中毒菌がいたとしても殺すことができます。めやすは、中心部の温度が75度Cで1分間以上加熱することです。 |
■ | 料理を途中でやめてそのまま室温に放置すると、細菌が食品に付いたり、増えたりします。途中でやめるような時は、冷蔵庫に入れましょう。 再び調理をするときは、十分に加熱しましょう。 |
ポイント(5) 食事
■ | 食卓に付く前に手を洗いましょう。 |
■ | 清潔な手で、清潔な器具を使い、清潔な食器に盛りつけましょう。 |
■ | 温かく食べる料理は常に温かく、冷やして食べる料理は常に冷たくしておきましょう。めやすは、温かい料理は65度C以上、冷やして食べる料理は10度C以下です。 |
■ | 調理前の食品や調理後の食品は、室温に長く放置してはいけません。 例えば、O-157は室温でも15~20分で2倍に増えます。 |
ポイント(6) 残った食品
■ | 残った食品を扱う前にも手を洗いましょう。 残った食品はきれいな器具、皿を使って保存しましょう。 |
■ | 残った食品は早く冷えるように浅い容器に小分けして保存しましょう。 |
■ | 時間が経ち過ぎたら、思い切って捨てましょう。 |
■ | 残った食品を温め直す時も十分に加熱しましょう。めやすは75度C以上です。 味噌汁やスープなどは沸騰するまで加熱しましょう。 |
■ | ちょっとでも怪しいと思ったら、食べずに捨てましょう。口に入れるのは、やめましょう。 |
◆ 食中毒予防の三原則は、食中毒菌を「付けない、増やさない、殺す」です。
◆「6つのポイント」はこの三原則から成っています。
◆ 食中毒は簡単な予防方法をきちんと守れば予防できます。
「除菌」「抗菌」「殺菌」の違い
殺菌
殺菌は、文字どおり特定の菌を殺すことです。とくに菌の種類や数は問いません。すべての菌を殺さなくても、数が減れば殺菌といえます。また、特定の一種類の菌が減っただけでも殺菌といえます。
除菌
除菌は、菌を取り除くことです。殺菌することも除菌に含まれますが、医薬品や医薬部外品以外では「殺菌」をうたえないので、この表現が使われます。製品としては食器用洗剤や洗濯用洗剤、アルコールスプレー、清拭用クロスなどがあります。
抗菌
抗菌の意味は、「菌の増殖を抑制する」こと、つまり菌が住みにくい環境をあらかじめつくることを意味します。殺菌や除菌のように、直接菌を殺したり取り除いたりするのではなく、菌の増殖を抑制あるいは阻害することをいいます。
滅菌
滅菌とは、あらゆる菌を殺菌することで、大変強力です。日常生活ではあまり耳にする機会はありませんが、病院での手術器具や注射には滅菌が必要とされます。
消毒
消毒とは、細菌の活動を弱めること。人体に有害な物質を除去または無害化することです。生存する微生物の数を減らすために用いられる処置法で、必ずしも微生物をすべて殺滅するものではありません。何をどの程度減らすかにより、高・中・低水準に分かれます。
消毒薬
除菌の方法は、熱水、水、石けん、アルコール(エタノール)などが、安全です。
一般によく使われる以下の消毒薬は、危険性が伴います。生物を殺す物質は、人体にもダメージを与えます。微生物と人の細胞は、基本構造と基本機能が同じでであるため、同様のダメージを受けます。
◆次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)
◆次亜塩素酸水
◆亜塩素酸水
◆界面活性剤(洗剤)
食中毒の予防と対処法
梅干の効用
梅干は、食中毒など消化器から発症する感染症の予防に有効です。
梅干は、感染予防以外にも多くの効能があります。
主な効能
◇ 老化防止 ◇ 血液浄化 ◇ 疲労回復 ◇ 殺菌 ◇ 高血圧 ◇ 動脈硬化 ◇ こり
◇ 食欲不振 ◇ 口角炎 ◇ 口唇炎 ◇ 口腔炎 ◇ 胃炎 ◇ 胃潰瘍 ◇ 腸炎 ◇ 下痢◇ 便秘 ◇ 痔 ◇ 風邪
◇ 食中毒 ◇ 疫痢、チフス、コレラなど消化器感染症
◇ 二日酔い ◇ 乗り物酔いなどの予防や改善
◇ 放射性物質の吸収阻止や骨に沈着したものを排除
梅干の強い酸味は、多量のクエン酸をはじめ、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸などの有機酸です。その他、シトステロール、オレアノリック酸、セリールアルコールなどを含んでいます。ミネラルが豊富に含まれ、とくに多いのは、カルシウム、リン、カリウムなどです。マグネシウム、鉄、ケイ素、ホウ素、ナトリウム、バリウム、チタン、リチウム、銅、亜鉛、バナジウムなども含まれます。
シソに含まれるアントシアニンのシソニン、ペリラニンは、精神安定作用、免疫システムの改善などの効果があります。
梅肉エキスの効用
梅肉エキスは、青梅の成分を濃縮したものです。
効能は広範囲にわたります。とくに消化器の病気には、高い効果があります。
主な効能
◇ 胃腸障害(慢性・急性) ◇ 心臓疾患 ◇ 循環器障害 ◇ 肝臓障害 ◇ 腎臓障害 ◇ 糖尿病 ◇ 高血圧 ◇ 結石(予防)◇ アレルギー◇ 感染症(伝染病)◇ 食中毒 ◇ 薬物中毒 ◇ 自家中毒 ◇ 虫垂炎 ◇ 結核 ◇ 肋膜炎 ◇ ぜん息 ◇ 扁桃炎 ◇ 気管支炎◇ 風邪 ◇ せき止め ◇ 下痢止め ◇ 止血 ◇ 寄生虫駆除 ◇ 腹痛 ◇ 不眠症 ◇ 痛風 ◇ 神経痛 ◇ ひょうそ ◇ 水虫 ◇ インキンタムシ ◇ 膣感染症
梅肉エキスの成分は、梅に含まれる成分に加えてムメフラールがあります。ムメフラールは、血液循環を促進する効果があります。他に多くの未知の成分が含まれています。梅肉エキスは常温で5年間、冷凍で10年間は保存できます。
飲用法
◇ そのまま水で飲む
寒い季節は水を湯煎で20~40度に温める
◇ 水または、湯に溶いて飲む
◇ オブラートに包んで飲む
◇ 葛に混ぜて食べる
◇ 粒タイプのものを飲む(外出時等やむを得ない場合)
◇ 水または湯に溶き、少量の葛飴を入れる(子供が酸味を拒む場合)
飲用量
1回1~3g 1日1~5回
症状の強さによって量の加減をする
治まってきたら量を減らし1日1回にする
激しい下痢で梅肉エキスを飲んでも変化がない場合は、2~3時間おきに飲む
嘔吐、腹痛、下痢……1g(大豆粒大)の量を水で飲む
症状に応じて、1日2~3回
疫痢、コレラなど消化器の感染症の疑いがある場合(激しい下痢と脱力感)
……2g(大豆粒大×2)の量を1日3~5回飲む
感染症(消化器)の流行時に予防のため……1gを1日1~2回
梅干黒焼の効用
梅干黒焼は、梅干を蒸し焼きにして有機物を分解し、無機質(ミネラル)を残したものです。梅干黒焼は、梅肉エキスでは十分な効果がない場合に使います。
また出血性の病気で、他の手段では出血が止まらない時に使用します。
主な効能
◇ 歯痛 ◇ 下痢 ◇ 糖尿病 ◇ 肝臓病 ◇ 心臓病 ◇ 肋膜炎 ◇ 熱中症 ◇ 歯周病 ◇ 止血
飲用法
黒焼粉末を1~3gを、水で飲む
出血が止まらない場合……1~2gを1日3~5回水で飲む
プロポリスの効用
プロポリスは、蜜蜂が集めてきた樹液や野草などのエキスです。
プロポリスは、副腎機能向上をはじめ、免疫機能、ホルモン、自律神経系など、広範囲な効果があります。特に感染症などには、顕著な効果があります。病原体の種類は問わず、すべての感染症に有効です。
主な効能
● 副腎機能向上 ◇ 内分泌腺 ◇ 免疫力 ◇ 免疫システム向上 ◇ 殺菌、抗腫瘍(抗癌)
● 循環器(心臓、血管など)機能向上
ペースト状プロポリスの飲用法
◇ 少量の葛湯・きな粉・ハトムギ粉・ハチミツ・すり下ろし果実等に垂らして一緒に食べる
◇ カプセルに入れて水で飲むと飲みやすい
カプセルは液体に溶けやすいので飲む直前にプロポリスを入れる
※ 葛湯、ハチミツなど粘度の高いものや、粉状の食品の上に垂らして摂ると飲みやすく、道具に比較的付着しにくく、後片付けがしやすくなる
効用……副腎機能向上、内分泌腺、免疫力、免疫システム向上、殺菌、抗腫瘍(抗癌)、循環器機能向上
成分……有機酸、ミネラル、エステル、アントシアニン、フラボノイド(フラボノール、フラバノン、カルコン等40種)、ポリフェノール
梅干しの作り方
材料 (例・作りやすい分量)
黄色く熟した梅……3㎏
塩(自然塩・梅用)……500~550g(梅の17~18%)
赤しそ……300〜600g(梅の1〜2割)
塩(しそ用)……(しその17~18%)
※赤しそ300g…塩50g、600g…塩100gで17%ほど
※梅が傷んでいないことを確認し、傷んでいるものは梅干しには使わず梅ジャムなど他のものに活用する……カビや濁りの原因となる
用具
漬け込む容器……ホウロウ・ガラス・陶器
重石
落し蓋
【作り方】
梅の下処理
梅は6月初旬~中旬以降の『熟した梅』を使用。熟した梅は柔らかいので丁寧に扱う。
(1) 梅の黒いヘタを1つずつ取り除く
※ 購入したものが少し緑がかっている場合は、1〜2日ほど常温に置いて追熟させる
(2) 梅をボウルに移して、ため水の中で梅を軽く洗い水気を切る
(3) きれいな布巾を使って1個ずつ梅の水気をふき取る
※ヘタの部分にも布巾を入れて水気を切る
※水気を取った梅は、ざるに移しておく
(4) 容器などの消毒
使用する容器・重石・落し蓋は洗った後よく乾かし、その後アルコール(エタノールか
焼酎)をふくませた布巾で拭く
(5) 容器の底に塩を薄くふる。
次に梅を広げ入れ、さらに上から全体に塩をふって梅をのせ、また塩をふるという作業を交互に繰り返す(最後に少し多めの塩が残るように調整)
・落し蓋をのせる前の、最後に梅を広げ入れる時には“できるだけ梅全体が平ら”になっているように気を付けて並べ、残りの塩を全体にふる。
・落し蓋をおき梅の重量の2倍ほど重石を置く。重石が保存容器から飛び出て、蓋ができなければ、ラップか紙でホコリが入らないように蓋をして全体を覆って冷暗所に数日置く
・梅から水分(梅酢)が出て梅全体が梅酢に浸かったら、重石を梅の重量の1/2〜2/3くらいまで減らす(梅全体が梅酢に十分浸かっている状態を保つ)
赤しその漬け方
赤しそは、梅の重量の10%~20%ほど太い茎を摘み取り、ため水の中で洗って汚れを落としてざる上げし、水気をよく切る(半日ほどざる上げして少し乾かすとなおよい)
大きなボウルに赤しそを入れ、塩の半量を加えてしっかりもんでアクを出す
赤しそを絞ってボウルに戻し入れて残りの塩をすべてふりかける
赤しそを少しほぐしながら塩をなじませ、手でもみ込み再び出てくるアクを絞り別のボウルに移す
下漬けして出た梅酢を1カップ(200ml)加えてほぐす
下漬けした保存容器の上に赤しそを広げ入れ、赤く染まった梅酢も戻し入れる
赤しそを箸でほぐし、梅酢と赤しそがよくなじんで色が移るよう容器全体を動かしてなじませる
再び梅全体が梅酢に浸かるくらいの重石を乗せる
土用干し
大きなざるに梅同士の間隔を空けて並べる
日当りのよい所に干し(日中2~3回ほど上下を返す)、夜は室内に取り込む
この作業を3日連続で行います。
梅肉エキスの作り方
【用意するもの】
◎青梅……無農薬が望ましい
◎セラミック鍋、土鍋、ガラス鍋、ホーロー鍋……のいずれか
◎へら……竹、木、セラミック…のいずれか
◎木づち
◎すり鉢、すりこぎ、まな板、
◎さらしの布(絞り用)
◎ガラスビン……保存用
【作り方】
① 新鮮な青梅を、水洗いし拭いて乾燥させる
② 種をとる……まな板の上に梅を置き、木づちでたたき割る
または、2枚の板にはさんで、圧して割る
③ 果肉をすり鉢にいれ、よくすりつぶす
④ つぶしたものを、布でこす
※ こした後の残った実は、あとでジャムなどにしてもよい
⑤ しぼり汁を鍋に入れ、弱火でゆっくり煮つめていく
※ 少し煮つまってきたら、こげつかないようへらで終始かき混ぜる
⑥ 色が黒褐色になり、へらですくい上げるとねっとりして糸をひくようになれば、火から下ろして自然に冷ます
⑦ 冷めたら、ガラスビンに入れて、密閉して保存する
梅干黒焼の作り方
【用意するもの】
◎梅干
◎素焼のつぼ
◎植木鉢、つぼ、金属バケツ など……素焼つぼをすっぽり覆う大きさ
◎粘土(土)
◎針金
◎乳鉢
【作り方】
① つぼの中に梅干を入れ、ふたのすき間に粘土をつめて目張りをする
② 全体を針金で縛ってふたが取れないよう固定する
③ 焼く……ガス火の弱火で加熱する…3~5時間
つぼの上に植木鉢などを置いて、全体をカバーする
④ 煙が出なくなったら、火からおろして自然に冷ます
⑤ 冷めたら、ふたを取り黒く焼けた梅干を取り出す
種は、除く
⑥ 乳鉢で微粉末になるまで、よくすりつぶす
⑦ ガラスビンに密閉保存する
簡単な作り方
【用意するもの】
◎梅干
◎深皿、茶わん、どんぶり、つぼ などのいずれかの容器
◎使う容器の全体をカバーできる金属か陶器の大きめの容器
◎すり鉢、すりこぎ
◎焼き網(鉄板付き)
◎ガラスビン
【作り方】
① 容器に梅干を入れる
② コンロの上に焼き網を置き、その上に梅干の入った容器を乗せる
③ 弱火で、2~3時間加熱する
④ 煙が出なくなったら、火を止め自然に冷ます
⑤ 冷めたら、種を取り除きすり鉢で細かくすりつぶす
⑥ ガラスビンに入れて、密閉保存する