紫外線とビタミンD
日光の効用
太陽の光は、私たちの生命を支える大切な自然の恵みです。地球上のあらゆる生命は、太陽の光と熱に育まれて生きています。人間にとっても日光は、単なる明るさではなく、食物や空気と並んで生命活動を支える重要な要素です。
近年は、紫外線によるシミ、シワ、皮膚がんなどの害が広く知られるようになり、日光を避ける生活が増えています。もちろん、紫外線を過剰に浴びることは身体に害を及ぼします。しかし一方で、日光を極端に避けすぎることも、健康にとって望ましいことではありません。
大切なのは、日光を恐れることではなく、自然の恵みとして適度に受け取り、過剰な紫外線からは賢く身を守ることです。
日光は生命活動を支える自然エネルギー
日光は、波長の短い紫外線、目に見える可視光線、波長の長い赤外線を含む「総合光線」です。資料では、日光は生命活動の原動力であり、適度に浴びることで代謝を高め、ホルモン分泌を活発にし、ビタミンDの形成を促すとされています。
また、日光浴の主な働きとして、全身の代謝促進、血液循環の改善、心臓機能・副腎機能・造血機能の向上、自律神経の安定、内分泌機能の調整、免疫力の向上、精神の安定などが挙げられています。さらに、ビタミンDが生成されることで、カルシウム代謝が高まることも重要な効果です。
つまり日光は、心身の働きを整えるうえで大切な自然の力です。ただし、どれほど必要なものであっても、過度になれば害になります。日光は「不足も過剰もいけない」ものであり、適度なバランスが大切です。
紫外線とは何か
紫外線とは、目に見える可視光線よりも波長の短い光のことです。波長の違いによって、UVA、UVB、UVCの三種類に分けられます。
UVAは波長が長く、地上に届く紫外線の大部分を占めています。雲や窓ガラスも通過しやすく、皮膚の奥にある真皮にまで届きます。
UVBはUVAより波長が短く、主に皮膚の表皮に作用します。量はUVAより少ないものの、作用は強く、日焼けによる赤みや炎症の主な原因となります。
UVCは最も波長が短く、破壊力も強い紫外線ですが、通常はオゾン層で吸収され、地表にはほとんど届きません。
UVAの特徴と影響
UVAは「生活紫外線」とも呼ばれます。曇りの日でも、室内でも、車内でも、窓ガラスを通して皮膚に届きやすいため、日常生活の中で知らないうちに浴びている紫外線です。
UVAは皮膚の奥深く、真皮にまで届きます。真皮には、肌の弾力や張りを保つコラーゲンやエラスチンがあります。UVAはこれらを傷め、シワ、たるみ、シミなどの「光老化」を進めます。また、皮膚の内部で活性酸素を発生させ、細胞の脂質やタンパク質に損傷を与えることもあります。
UVAは強い痛みや赤みを起こしにくいため、危険性に気づきにくい紫外線です。しかし、長い年月をかけて肌の老化を進めるため、日常的な対策が大切です。
UVBの特徴と影響
UVBは「レジャー紫外線」とも呼ばれ、屋外での日焼けの主な原因となります。UVBを多く浴びると、皮膚が赤くなり、炎症を起こし、ひどい場合には水ぶくれになることもあります。
UVBは主に表皮に作用し、シミ、そばかす、乾燥、角質肥厚などを引き起こします。さらに重要なのは、UVBが細胞の核に吸収され、DNAを傷つけることがある点です。DNAは細胞の設計図ですから、そこに損傷が起これば、細胞に大きな負担がかかります。過剰なUVBは、免疫力の低下、白内障、皮膚がんの要因にもなるとされています。
特に、日焼けしても褐色になりにくく、赤くなりやすい肌質の人は、紫外線による影響を受けやすいとされています。日本人の多くは紫外線感受性の中間型ですが、肌質には個人差があるため、自分の反応をよく知ることが大切です。
紫外線の害
紫外線を過剰に浴びると、身体にはさまざまな害が生じます。
肌では、シミ、シワ、たるみ、乾燥、肌荒れ、そばかす、炎症などが起こります。UVAは真皮に作用して肌の弾力を失わせ、UVBは表皮に作用して炎症やDNA損傷を起こします。
また、紫外線は活性酸素を発生させます。活性酸素は細胞を酸化させ、皮膚の老化を早める要因になります。さらに、過剰な紫外線は皮膚の免疫機能を低下させ、異物や細菌に対する防御力を弱めることもあります。
目への影響も見逃せません。強い紫外線を浴び続けると、白内障などの目の障害につながる可能性があります。紫外線対策は、美容だけでなく、全身の健康を守るためにも必要です。
ビタミンD
ビタミンDは、骨とカルシウム代謝に深く関わる重要な栄養素です。大きく分けると、動物由来のビタミンD3と、植物由来のビタミンD2があります。
人間の皮膚では、7-デヒドロコレステロールという物質が紫外線を受けることで、ビタミンD3へと変化します。植物では、エルゴステロールが紫外線を受けてビタミンD2になります。つまりビタミンDは、食事から摂るだけでなく、日光を浴びることで体内でもつくられる栄養素です。
日光を完全に避ける生活を続けると、ビタミンDの生成が不足しやすくなります。そのため、紫外線を避けることだけを考えるのではなく、必要な日光を適度に受けることも大切です。
ビタミンDの働き
体内に入ったビタミンDは、そのまま働くのではありません。まず肝臓で変化し、さらに腎臓で活性型ビタミンDになります。この活性型ビタミンDが、小腸でカルシウムの吸収を促し、腎臓でカルシウムの再吸収を助けます。そして、血液中のカルシウムとリンの濃度を一定に保つ働きをします。
この働きによって、骨の形成と維持が正常に行われます。骨は一度つくられたら終わりではなく、古い骨が壊され、新しい骨がつくられる「骨の再構築」を絶えず行っています。ビタミンDは、この骨の代謝を正常に保つうえで欠かせません。
ビタミンDが不足すると、子どもではくる病、成人では骨軟化症が起こりやすくなります。高齢者では、長期の不足により骨粗鬆症や骨折のリスクが高まります。
ビタミンDは免疫システム、血圧調節、筋肉機能、発毛調節などにも関わるとされています。
日光不足による問題
紫外線を恐れるあまり、日光を極端に避けると、ビタミンD不足を招く可能性があります。ビタミンD不足は、骨の弱化だけでなく、筋力低下、転倒リスクの増加、免疫機能の低下などにも関わります。
特に注意したいのは、室内で過ごす時間が長い人、高齢者、日焼け止めを常に厚く塗っている人、外出が少ない人、妊娠中の人、成長期の子どもです。必要な日光をまったく受けない生活は、身体の自然な働きを弱めてしまうことがあります。
日光は、強く浴びればよいのではありません。やわらかな光を、心地よい範囲で受けることが大切です。
ビタミンDの過剰にも注意
ビタミンDは大切な栄養素ですが、多ければ多いほどよいわけではありません。通常の食事や適度な日光浴で過剰になることは少ないとされていますが、サプリメントなどで大量に摂り続けると、過剰症を起こすことがあります。
ビタミンDを過剰に摂ると、血液中のカルシウム濃度が高くなりすぎ、腎臓や筋肉、血管などにカルシウムが沈着するおそれがあります。結石、食欲不振、体重減少、体調不良などを招くこともあります。
健康づくりの基本は、過不足のない適量です。日光、食事、必要に応じた補助食品を、バランスよく考えることが大切です。
紫外線が強くなる条件
紫外線対策を考えるうえで、いつ、どこで紫外線が強くなるかを知ることは大切です。
UVBは3月から9月に多くなり、夏に最も強くなります。UVAは一年を通じて地上に届きますが、春から夏にかけて多くなります。
一日の中では、午前10時から午後2時ごろが最も紫外線量の多い時間帯です。曇りの日でも紫外線は届き、曇天や雨天では20〜30%、薄曇りでは50〜80%の紫外線が届くとされています。
また、山や海岸では紫外線が強くなります。高度が300m上がると紫外線量は約4%増加するとされます。地面からの反射にも注意が必要です。新雪は約85%、砂は約25%、アスファルト・コンクリート・水面は約20%、芝生や土は約10%の紫外線を反射するとされています。
日常でできる紫外線対策
紫外線対策の基本は、強い紫外線を避け、必要な日光は適度に受けることです。
外出時には、つばの広い帽子、UVカット加工の日傘、襟付きの長袖衣類を活用します。サングラスは、色の濃さだけで選ばず、UVカット機能のあるものを選ぶことが大切です。色が濃いだけでUVカット機能のないサングラスは、瞳孔が開き、かえって目に紫外線が入りやすくなることがあります。
日焼け止めは、生活場面に合わせて選びます。日常生活では強すぎるものを使う必要はなく、肌に合うものをこまめに塗り直すことが大切です。資料では、日焼け止めには紫外線散乱剤を含むものと、紫外線吸収剤を含むものがあり、敏感肌や子どもには、比較的肌にやさしい散乱剤タイプがすすめられています。
SPFは主にUVBへの防御力、PAは主にUVAへの防御力を示します。数値や記号が高いほど防御力は高まりますが、そのぶん肌への負担が増える場合もあります。大切なのは、数値の高さだけで選ぶのではなく、生活内容、肌質、季節に合わせて使い分けることです。
内側からの紫外線対策
紫外線対策は、外から守るだけでは十分ではありません。紫外線を浴びると、皮膚では活性酸素が発生しやすくなります。そのため、身体の内側から肌を整える食事も大切です。
抗酸化に関わる栄養素としては、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテン、ビタミンB群、亜鉛、セレンなどが重要です。これらは、皮膚の再生、細胞の代謝、血流の維持、活性酸素対策に役立ちます。
日々の食事では、穀類、豆類、野菜、海藻、きのこ類、種実類などをバランスよく取り入れることが望まれます。肌は外側から塗るものだけでなく、毎日の食事、睡眠、心の状態によっても大きく左右されます。
上手な日光浴の方法
日光浴は、強い日差しの中で長時間行う必要はありません。むしろ、短時間で心地よく行うことが大切です。
足裏、腰、腎臓部などに日光を当て、皮膚に直接、気持ちよい程度に行う方法が示されています。時間は1回15〜30分を目安とし、体調や日差しの強さによって加減するとよいとされています。
顔や目を強く焼く必要はありません。朝や夕方のやわらかな光を選び、無理のない範囲で行うとよいでしょう。皮膚が赤くなる、熱い、不快、疲れると感じる場合は、すでに過剰です。
日光浴の基本は、「気持ちよい」と感じる範囲です。これは、身体が自然に示してくれる最も分かりやすい目安です。
まとめ
紫外線とビタミンDの問題は、「浴びるべきか、避けるべきか」という単純な話ではありません。日光は生命を育てる恵みであり、紫外線は使い方を誤れば害にもなる強い力です。
適度な日光は、ビタミンDを生み、カルシウム代謝を助け、骨を守り、代謝、神経、内分泌、免疫、精神の安定に役立ちます。一方で、過剰な紫外線は、肌の老化、炎症、DNA損傷、免疫低下、目の障害などを招くおそれがあります。
したがって大切なのは、日光を敵にしないことです。そして、無防備に浴びすぎないことです。
朝や夕方のやわらかな光を上手に取り入れ、紫外線の強い時間帯には帽子、衣類、日傘、サングラス、日焼け止めで守る。食事では、ビタミンDを含む食品と、肌を守る抗酸化栄養素を補う。そして何より、自分の身体の声を聞き、「心地よい範囲」を守る。
この調和こそが、骨を守り、肌を守り、心身の健やかさを育てる、最も自然で賢い紫外線対策です。
